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世界遺産に推薦 富岡製糸場と絹産業遺産群 政府決定 14年登録目指す

世界文化遺産に推薦が決まった富岡製糸場=23日午後、共同通信社ヘリから
世界文化遺産に推薦が決まった富岡製糸場=23日午後、共同通信社ヘリから

政府は23日、世界遺産条約関係省庁連絡会議を外務省で開き、2014年の世界文化遺産登録を目指し、本県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ推薦することを正式に決めた。高品質な生糸の大量生産を実現し、世界の絹産業の発展や絹の大衆化に大きく貢献した富岡製糸場を中心とする4資産が、国の代表として、いよいよユネスコの審査にかけられる。(関連記事 14、15、26、27)

連絡会議は環境省や国交省など7省庁で構成。全会一致で推薦を了承した。

会議後、河村潤子文化庁次長は「9月の暫定推薦書と来年の正式版の提出に向けて、しっかりとコンセプトを詰め、資産の保存管理にも万全を期す。地元と協力していい結果が出るように頑張っていきたい」と意気込みを語った。

今後は9月末までに暫定版の推薦書をユネスコに提出。書類形式の審査を受け、不備がなければ、内容の完成度を高めて来年1月をめどに正式な推薦書を提出する。

ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)が来年夏ごろに4資産を現地調査し、14年5月ごろ、世界遺産リストに登録するかどうかを勧告。同年夏のユネスコ世界遺産委員会で世界遺産登録の可否が決まる見通し。

推薦決定を受け、大沢正明知事は「世界に向けた新たな一歩だ。県民の期待と励ましの声を大変心強く思っている。今後は全国の方々にも応援してもらえるようつとめたい」とのコメントを発表した。

会議では、世界遺産に昨年登録された「平泉」(岩手県)について、周辺の柳之御所遺跡などの追加登録を目指し、推薦を待つ国内候補の「暫定リスト」に記載することも決めた。

現在、国内の世界遺産は16件(自然遺産4、文化遺産12)。暫定リストには絹産業遺産群を含め12件が記載されており、このうち「富士山」「武家の古都・鎌倉」の2件は既に政府がユネスコへ推薦している。

【解説】「絹の国」力結集を

本県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」が、2014年の世界文化遺産登録を目指してユネスコに推薦されることが正式に決まった。03年に県が富岡製糸場の世界遺産登録を目指す考えを表明して以来、県民を巻き込んで展開してきた登録運動は一つヤマ場を乗り越えた形だが、まだまだ関門も待ち受けている。

今後、文化庁は9月末を期限とする暫定版、さらに来年1月をめどに正式な推薦書をユネスコに提出する。諮問機関による現地調査を経て、審判を受けるのは2年後だ。

世界遺産の総数は現在962件で、このうち700件以上を文化遺産が占める。ユネスコには、比較的登録が少ない途上国に配慮しつつ総量を抑えたいという思惑があり、近年、特に先進国の文化遺産登録は狭き門となっている。

文化庁と県には、まずそうした逆境をはねのける力を持った推薦書を完成させることが求められる。さらに4資産の中には破損が目立つものもあり、現地調査を前に市町と連携した整備が待ったなしの状況だ。

推薦決定後、文化庁は「(推薦書の)コンセプトをさらに詰め、地元のみなさんと頑張っていきたい」と強調した。登録運動に関心を持ち、学び、加わってきた県民への再度の協力要請ともいえるだろう。文化庁や県の仕上げ作業を後方から支援するためにも、「絹の国」に生きる県民の一層の力の結集が必要だ。

(文化生活部長 久保田健)

【富岡製糸場と絹産業遺産群】

治政府がフランスから製糸や工場建築の技術を導入して1872(明治5)年に設立した富岡製糸場(富岡市)を中心に、製糸場と連携して繭の生産に貢献した田島弥平旧宅(伊勢崎市)、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)で構成。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)