上毛新聞社「21世紀のシルクカントリー群馬」キャンペーン

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《シルクカントリー21》富岡製糸場と絹産業遺産群 世界遺産に推薦決定 「絹の国」の魅力県民に 熱帯びる地道な活動

「シルクカントリーin富岡製糸場」で基調講演する星野知子さん=ことし3月
「シルクカントリーin富岡製糸場」で基調講演する星野知子さん=ことし3月

世界遺産条約関係省庁連絡会議で、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦が正式に決まった。県や富岡市など関係市町と県民が積み上げてきた世界遺産登録運動が、また一つゴールに向かって前進した形だ。県民に「絹の国」の魅力をあらためて伝える運動の歩みを振り返った。

登録に向けた運動は2003年8月、県が旧官営富岡製糸場の世界遺産登録推進を表明したことから始まった。翌年には県世界遺産推進室が新設され、県主催の講座を受けた市民による「富岡製糸場世界遺産伝道師協会」も発足。県民を巻き込んで運動が動きだした。

伝道師協会の近藤功会長(71)は「とにかく製糸場の価値を県民に理解してもらおうとの一心だった。当時は『世界遺産になるはずない』などの厳しい声も多かったが、伝道師の中に疑う人はいなかった。地元に誇りを持とうとする気持ちが強かった」と振り返る。

本県は秋田県と並んで全国に先駆けて、文化庁の「近代化遺産総合調査」(1990~91年)を実施。貴重な近代化遺産が数多くあることが分かった。

この調査を受けて94~99年には上毛新聞社が「近代化遺産保存活用キャンペーン」を展開。近代化遺産の保存・再利用を目的にシンポジウムや見学ツアーを行い、近代化遺産が地域づくりに果たす役割や可能性を提言した。

世界遺産劇場のイベント。西繭倉庫前特設ステージで開かれた東京スカパラダイスオーケストラの演奏会には、若者たちが大勢押しかけた=昨年9月
世界遺産劇場のイベント。西繭倉庫前特設ステージで開かれた東京スカパラダイスオーケストラの演奏会には、若者たちが大勢押しかけた=昨年9月

こうした蓄積を踏まえ、県と上毛新聞社などは2005年から、世界遺産登録を支援する「シルクカントリー群馬キャンペーン」を共同開催。富岡製糸場をはじめ、絹遺産を持つ市町村で養蚕体験や落語会、ファッションショーなど、多彩なイベントを展開してきた。県民運動として盛り上がりを見せ、07年1月には「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産暫定リストに記載された。

運動にアクセントをつけたのが昨年9月、富岡製糸場で開かれた「世界遺産劇場」(世界遺産劇場実行委員会、上毛新聞社など主催)だった。世界遺産候補地、製糸場内の西繭倉庫前を会場に東京スカパラダイスオーケストラなど人気バンドの演奏会が開かれ、4日間で約1万2千人が来場。若い世代にも製糸場の魅力をアピールした。

ことし3月に開かれた「シルクカントリーin富岡製糸場」では、女優でエッセイストの星野知子さんが「愛しの富岡製糸場」と題して基調講演。シンポジウムも行い、絹にかかわってきた人たちの営みや思いを伝えていくことの大切さを訴えた。

世界遺産登録に向けた運動が前進するたびに、県民の郷土に向ける視線も少しずつ変化しているようだ。

◎世界遺産登録運動の歩み

1990年4月 「県近代化遺産総合調査」が全国に先駆けてスタート
 94年   上毛新聞社が「近代化遺産保存活用キャンペーン」を開始
2003年8月 県が富岡製糸場の世界遺産登録推進を表明、富岡製糸場を世界遺産にする研究プロジェクトを発表
 04年4月 県が世界遺産推進室を新設
   8月 富岡製糸場世界遺産伝道師協会が発足
   11月 県が富岡製糸場世界遺産登録推進委員会を設置
 05年7月 富岡製糸場が国史跡に指定される
   11月 シルクカントリー群馬シンポジウム(富岡製糸場)開催
 06年7月 富岡製糸場が国の重要文化財に指定され、国史跡と合わせた二重指定に
   11月 日仏産業遺産シンポジウム「世界から見た富岡製糸場」(東京日仏会館)を開催
 07年1月 政府が「富岡製糸場と絹産業遺産群」などを暫定リスト記載物件に選定、ユネスコ世界遺産センターへ申請
   8月 シルクカントリーin赤岩を開催
 09年2月 シルクカントリーin桐生を開催
   4月 県が世界遺産推進室を課に格上げ
   7月 県が世界遺産学術委員会を設置。高山社跡(藤岡市)が国史跡に指定される
 10年2月 「富岡製糸場と絹産業遺産群」国際専門家会議を開催(文化庁、県主催)。荒船風穴(下仁田町)が国史跡に指定される。シルクカントリー群馬2010国際シンポジウムを前橋市で開催
   3月 シルクカントリーin伊勢崎を開催
   9月 シルクカントリーin下仁田を開催
 11年9月 「世界遺産劇場」を富岡製糸場で開催
   10月 国際専門家会議で4資産を候補にすることで合意
 12年3月 シルクカントリーin富岡製糸場を開催
   6月 国の文化審議会が田島弥平旧宅(伊勢崎市)の国史跡指定を答申
   7月 文化審議会世界文化遺産特別委員会でユネスコへの推薦を了承
   8月 世界遺産条約関係省庁連絡会議でユネスコへの推薦を決定
富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)