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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

《世界遺産への針路(3)》観光客受け入れ ガイドのレベル高評価 駐車場整備が急務

県が主催したバスツアーで富岡製糸場を見学する人たち=24日
県が主催したバスツアーで富岡製糸場を見学する人たち=24日

政府が「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産推薦を正式決定した23日、にぎわう富岡製糸場(富岡市)に、ひときわ熱心にガイドの解説に聴き入る一団の姿があった。JTB西日本(大阪市)が行った現地研修に参加した提携会社の営業社員約20人だ。

「ガイドのレベルが全体的に高い。何より地元の熱意を感じた」。目と耳で情報収集した同社国内商品事業部の宮川一朗課長は、製糸場に合格点を付ける。

世界遺産は話題性の高い観光素材であり、大手旅行会社は早くも動きだしている。同社は10月から富岡製糸場をコースに組み込んだ団体旅行商品を展開する。西日本でも知名度の高い草津温泉が宿泊地の一つだ。「関西圏のお客さまに提案できる余地が十分ある。世界遺産登録は、そのきっかけになる」(宮川課長)ととらえる。

■定員倍増

一方、県は24日、富岡製糸場と高山社跡(藤岡市)を巡るバスツアーを開いた。当初の募集は40人。しかし「チラシを配りきる間もなく定員が埋まってしまった」(県西部行政事務所)。急きょ、定員を2倍に増やし、バス2台で80人を案内した。

県は世界遺産候補の4資産を巡るモデルルートを提案するが、日帰りで全てをじっくり見て回るのは難しい。県世界遺産推進課の高橋陽一補佐は「1日に2資産とその周辺を観光して県内の温泉地に1泊し、翌日は別の絹遺産を見学してもらうのが理想」と期待する。世界遺産候補の4資産だけでなく、「ぐんま絹遺産ネットワーク」に登録された各地に残る養蚕、製糸、織物関連の文化財なども売り込んでいく考えだ。

今後、さらに増えると予想される来場者にどう対応していくのか。住民の平穏な生活とにぎわいの両立を模索したのが、2007年に世界文化遺産に登録された石見銀山遺跡(島根県大田市)だ。もともと著名な観光地ではなかったが、世界遺産効果で観光客は06年の40万人から08年には80万人に倍増した。周辺部に整備したマイカー駐車場と見学エリアを分離し、バスで観光客を運ぶパーク&ライドを取り入れている。

■生活の場

本県では富岡製糸場を除く3資産は山の中にあったり、生活の場でもあるなどの事情から、駐車場整備をはじめとした受け入れ態勢は十分に整っていない。大田市教委石見銀山課は「現地を歩いて見てもらうことで、落ち着いた街並みの良さが分かってもらえた」と強調する。富岡製糸場だけでなく、他の資産にどう観光客を呼び込むのか。それぞれの資産ごとに、ふさわしい観光を早急に用意しなければならない。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)