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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

荒船風穴 石積みに冷風の道 下仁田町教委 独特な技法確認

世界遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産、国史跡「荒船風穴」(下仁田町南野牧)で崩落した石積みを調査している町教委は、風穴の構造に石を粗く積み上げて冷風の通り道を確保する独特な技法が用いられていることを確認した。町歴史民俗資料館ふるさとセンターの秋池武所長は「石の面を重ねるのではなく、角張った石を点で接するように積んで冷風を通している。風穴の機能を維持するためには、この方法を踏襲する必要がある」としており、確認した建造技術を来年以降の復旧作業に生かす方針。

◎復旧作業で技術を踏襲

町教委によると、城郭のような堅固な石積みと異なり、冷風の吹き出し口をつくる必要のある風穴特有の石積みは詳細な建造技術が不明だった。今回の調査で、一定の強度は確保しつつ、あえて隙間を設ける手法が、あらためて確認された。

荒船風穴は自然の冷風で蚕の卵(蚕種)を貯蔵し、繭の大量生産に貢献した施設。明治後期から昭和初期に利用され、蚕種貯蔵用風穴3基が現存する。このうち1号風穴の石積みの一部が2010年に自然崩落。町教委は原因究明と復旧作業のため、有識者からなる調査整備委員会の助言を受けながら調査を続けてきた。国史跡指定された風穴の建造方法を調査したのは国内で初めてという。

崩れたり、緩んだ石計約180個や土砂を撤去して状態を詳しく調べたところ、1号風穴の石積みは高さ約5~8メートル。表面の石と、その背面に入れた直径20~30センチの「裏込め」のほか、自然の大型岩塊のすき間に粗く斜めに積んだ直径50センチほどの「組石」で構成されていることが分かった。

自然の大型岩塊から吹き出す冷風(温度は約2度)は組石、裏込め、表面の石のすき間を通り、貯蔵室に達していた。

崩落は、裏込めのすき間に長期間かけて流れ込んだ土砂が影響していると考えられるという。町教委は崩落前の写真などを参考に設計図をつくり、復旧作業を進める。現在、1号風穴周辺は立ち入りできないが、調査の一段落する10月以降は見学できるようになる見通し。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)