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富岡製糸場で企画展 寄宿生活、労働、教育 工女の暮らしに迫る

裁縫の教室で使われたミシンなども展示される
裁縫の教室で使われたミシンなども展示される

旧官営富岡製糸場の創業140周年記念事業として、富岡市などで構成する実行委主催の企画展「工女の暮らし展」が12日から富岡製糸場のブリュナ館で開かれる。創業時にフランス人技術者、ポール・ブリュナ一家の住居として建てられ、後に工女の教育施設として使われたブリュナ館を初めて見学者に公開。官営期から片倉期までの資料を展示し、寄宿生活を営みながら製糸場を支えた工女たちの暮らしぶりに迫る。

1939~87年に製糸場で操業した片倉工業(本社・東京)は、2010年度に約千点の資料を市に寄託した。企画展では、この資料を中心に明治初期から昭和にかけて工女がどのように働き、暮らしたかを示す教科書、机、ミシンなどの道具類や写真パネル計40点を展示する。工女に関連する資料を市の企画展で公開するのは初めて。

工女が使った教科書。片倉工業は教育委員会を持ち、自前の教科書を編さんしていた
工女が使った教科書。片倉工業は教育委員会を持ち、自前の教科書を編さんしていた

富岡製糸場は、広大な敷地内に労働者のための寄宿舎など生活施設を備えていた。官営模範工場として創業した明治初期から、主力として工場を支えた工女のための教育が充実していた。

製糸場での教育は「読み、書き、そろばん、裁縫」が基本。これに加えて女性のたしなみとして、料理の教室もあったという。富岡製糸場総合研究センターの岡野雅枝さんは「寄宿生活を送っていると、工女は親元で家事を学ぶ機会がない。製糸場での教育は、女性としての教養を授ける場でもあった」と説明する。

国重要文化財のブリュナ館。展示に合わせて内部が公開される
国重要文化財のブリュナ館。展示に合わせて内部が公開される

企画展の会場となるブリュナ館は1873(明治6)年に建設された。木骨れんが造りで回廊風のベランダ、れんが造りの地下室があり、国重要文化財に指定されている。

建物を守るため室内の利用は会議やシンポジウムなどに限定しているが、今回は企画展の趣旨に合わせて公開することになった。公開範囲は講堂を中心とした一部分だが、操業停止時まで工女が学んだ「片倉富岡学園」の雰囲気を感じ取ることができる。

岡野さんは「労働の技術だけでなく、人としての素養を高めるための教育意識の高さが官営期から片倉期まで受け継がれた。工女の暮らしぶりの変遷を見てもらえるといい」と話している。

メモ
工女の暮らし展は11月11日まで。製糸場入場料(大人500円)が必要で、期間中は富岡市民と長野県岡谷市民のみ入場無料。13日午後2時から講演会「『富岡日記』からみた工女の暮らし」も(要予約)。問い合わせは富岡製糸場(TEL:0274・64・0005)へ。

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