《探訪 ぐんま絹遺産》桐生 今に息づく絹の“顔” のこぎり屋根 大正の現役工場 桐生織1300年の魅力を
- 掲載日
- 2012/10/23
織物参考館「紫」の展示で目を引くジャンボ高機。現存するものでは日本最大で、織り幅は2.5メートルある
絹産業の最終工程を担う機屋。養蚕、製糸業から受け取った"バトン"を織物にして全国、世界へ発信してきた。群馬の絹産業を守るアンカーともいえる織都・桐生市のぐんま絹遺産3カ所を巡った。
今もお召し織などを作り続けている森秀織物ののこぎり屋根工場
◎のこぎり屋根
同市東の住宅街に、織物の歴史を1200点の実物資料で紹介する織物参考館「紫(ゆかり)」がある。のこぎり屋根の館内は、北窓から取 り込む柔らかい光が広がる。
「雨の日でもびっくりするぐらい明るい。のこぎり屋根は、音を乱反射させて和らげる効果もあるんです」と長谷川博紀社長(41)。最盛期に織機50台が並んだ工場としての役割を終えた後、1981年に森島純男会長(68)が資料館として整備した。
織物工場を改修した織物参考館「紫」。5連ののこぎり屋根を見ることができる
「動く、さわれる、生きている」が コンセプトで、手織りや染色体験もできることから 小学生の社会科見学や観光客などが訪れる。
屋外の展望デッキに出ると、5連ののこぎり屋根が一望できた。大正から昭和に建て増ししており、窓の大きさや屋根の頂点の高さが微妙に違うという。
桐生織物会館旧館の1階販売場。天井にはさまざまな織り方による帯などが展示されている
◎大正の現役工場
続いて隣接する森秀織物の工場へ。今も稼働しており、赤色の3連ののこぎり屋根の建物内から「ガチャン、ガチャン」と機音が響く。2013年の織物カレンダー作りが最盛期を迎えていた。
1924(大正13)年に建設。参考館や工場は国の登録有形文化財で、経済産業省の近代化産業遺産にも認定されている。資料や古い道具類だけでなく、実際に動く機械も見られるので、桐生織についていろいろな視点で見ることができた。
車で西へ5分ほど走り、市街地にある 桐生織物会館旧館(桐生織物記念館)を訪れた。34年に桐生織物同業組合の事務所として建てられ、国登録有形文化財で近代化 産業遺産でもある。しばしば映画の撮影にも使われる雰囲気ある建物。青緑色の洋風瓦ぶき屋根で、外壁は、ひっかいたようにぎざぎざしたスクラッチタイルが使用されている。
桐生織の伝統的な技術、材料などを紹介している織物資料展示室
1階はネクタイなどの洋装、帯や帯地バッグなど和装関連の製品を販売している。桐生織物協同組合の熊田恵司共同販売部長(54)は「展示販売を通じて、桐生織を世界に発信していきたい」と話し、施設の果たす役割について説明してくれた。
「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界文化遺産登録を目指す中、桐生は同遺産群に含まれていない。けれども桐生織の魅力にあらためて触れ、産業として生きる群馬の絹の"顔"をアピールし続けることは、登録への大きな応援になると感じた。
(文化生活部 浜名大輔)
第4火曜日掲載
- 【織物参考館「紫(ゆかり)」】【森秀織物】
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- 桐生市東4-2-24
- 2施設セットの入場料 大人700円、大学生600円、中高生500円、小学生400円、未就学児無料、月曜休館
- 同館TEL:0277・45・3111
- 【シルク トピック】織物資料展示室 技法、衣装を紹介
- 桐生織物会館旧館(桐生織物記念館)2階に、織物資料展示室が今夏オープンした。1300年の歴史を持つ桐生織物初の総合展示館だ。
- ステンドグラスの窓に囲まれた約100坪の大広間を改装。桐生織の製作工程の写真、歴史年表、八丁撚糸(ねんし)機やジャカード機で使う紋紙に穴を開けるピアノマシンなど道具類、見本帳を展示している。
- また、お召し織、緯(よこ)錦織、経(たて)錦織、風通織など桐生織の7技法の織物を紹介。映画「利休」で使われた衣装、昭和20~40年代に桐生から輸出された東南アジアやアフリカなどの民族衣装も並んでいる。
- 桐生織物協同組合の藤生孝昭専務理事(62)は「伝統的な技術や歴史的な道具、製品などを見ることによって、桐生の織物の魅力を多くの人に知ってもらいたい」と話している。