富岡製糸場140周年国際シンポ 産業遺産 後世に 県庁で専門家 教育の重要性訴え
- 掲載日
- 2012/11/13
富岡製糸場創業140周年を記念した国際シンポジウムが11日、県庁で開かれ、海外の専門家は 産業遺産の大切さを 次世代に継承していくため子どもたちへの教育の重要性を訴えた。製糸場関連の 県民ボランティアら約100人が参加し、2014年の 世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」の保存、公開方法の 参考になる海外事例に耳を傾けた。
国際シンポジウムは「世界遺産登録へ!産業遺産の魅力~まもる、みせる、つたえる」をテーマに、県、富岡市、上毛新聞社などによる富岡製糸場創業140周年記念事業実行委員会が主催した。
国際産業遺産保存委員会フランス代表のジュヌビエーブ・デュフレーヌさん、同メキシコ代表の岩垂ミグルさん、県世界遺産学術委員会委員長の岡田保良・国士舘大教授が、日本イコモス国内委員会事務局長の矢野和之さんの進行でパネルディスカッションした。
岡田さんは「有形の建物や土地だけでなく、無形の技術や伝統も残していくことが産業遺産では重要な視点」と強調し、無形の部分を伝える活動について、岩垂さんは「教育が極めて重要」として、メキシコでは文化遺産の教育を小学1年から一部の学校で始めていると説明した。
デュフレーヌさんは、産業遺産の保存の大切さを子どもたちに理解してもらうため、教諭に研修の場を提供し始めたフランスの現状を紹介した。
パネル討議に先立つ講演で、デュフレーヌさんは15世紀に国王の呼び掛けで始まったツールやリヨンの絹産業の歴史から説明。19世紀にリヨンの商工会議所が建てた織物博物館、展示室に改装された製糸工場、伝統を引き継いで高品質な絹製品を作るエルメス社などを写真とともに示し、織機や織物など歴史を伝える資料を展示する大切を語った。
岩垂さんは、メキシコ中部で 19世紀末に採掘が始まったディフィコルタ鉱山の機関室などを 08年に修復・復元して 博物館や解説センターを設けた事例を挙げ、「来訪者が 地域の鉱山の発展の歴史的、技術的、文化的な知識を 学び産業遺産に関心を持つようになる」と 意義を強調した。