《富岡製糸場140周年記念国際シンポ》「フランスの絹産業遺産」 伝統的な生産継続 国際産業遺産保存委員会フランス代表 ジュヌビエーブ・デュフレーヌさん
- 掲載日
- 2012/11/17
講演するジュヌビエーブ・デュフレーヌさん
フランスでは15世紀に国王の呼び掛けで中部のトゥールに製糸場が造られ、その後、南東部のリヨンで絹織物が盛んになった。トゥールとリヨンは絹産業の揺籃(ようらん)期で最も重要な2大都市だ。
リヨンのクロワ・ルースの丘には18~19世紀の絹産業の建物が残っており、ジャカード織機を入れるため天井が高くなっている。この織機を考案したジャカードの銅像も建っている。
ナポレオン1世が全ての宮廷にリヨンの絹を使うように命じたため、リヨンで絹産業が発展した。商人と絹生産者の紛争を処理したり、織物の質や絹の湿気を検査する公的機関も設置された。
1856年には商工会議所が織物博物館を造り、多くの絹織物や生地見本などファラオの時代から現在までの200万点以上を収蔵している。
リヨンには有名な絹生産会社があり、城のカーテンや宮廷用の織物など美しい繊維を貴族に提供してきた。ダマスク(緞子(どんす))などを手織りしてきたタシナリ・シャテル社は1806年にジャカード織機を導入。プレル社は1752年から絹織物を作り、ベルサイユ宮殿にも作品を収めた。同社の図書館には古い本や生地見本が保存されている。図柄のデッサンなど2世紀にわたる類を見ない資料だ。手織りの伝統を生かしてビロードや金銀糸を使ったブロケード(浮き模様の織物)を織っており、手織り機から最先端の自動織機までそろっている。
リヨン近くのジュジュリューも絹産業で有名。ボネ家が中心で、繭選別の様子や製糸場の版画が残っている。富岡製糸場のような工女のための寄宿舎も建っていた。織機が置かれた場所は展示場として良好に保存されている。トゥールのローズ家は今も近代的な織機のほか、ジャカード織機を保存して高級絹織物を生産している。
最後にエルメスのスカーフを紹介したい。世界的に著名な会社があるということも重要で、フランスでは伝 統的な生産を続けないといけないという考えが強い。エルメス社はブラジルや中国から絹糸を輸入し、非常に高品質な絹 製品を織り続けていこうとしている。