上毛新聞社「21世紀のシルクカントリー群馬」キャンペーン

上毛新聞社Presents
「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

織物文化広く発掘 ぐんま絹遺産 新たに20件登録  

ぐんま絹遺産に登録された藤岡・諏訪神社の手水石と常夜燈。手水石裏面には「奉納 三井店」と刻まれている
ぐんま絹遺産に登録された藤岡・諏訪神社の手水石と常夜燈。手水石裏面には「奉納 三井店」と刻まれている

県が登録を進めている「ぐんま絹遺産」に、養蚕や織物関係の建物など20件が3次登録された。これまでに登録された58件は国や県、市町村の文化財に指定・登録された遺産が中心だったが、今回は高山社跡に関連する「高山長五郎の墓」(藤岡市)や「桐生織塾」(桐生市)など、文化財指定から漏れていた11件が加わったのが特色。県は今後も登録を増やし、ネットワーク化の充実を図っていく。

◎文化財未指定も

ぐんま絹遺産が世界遺産候補の高山社跡(国史跡)1件だけだった藤岡市では、文化財未指定の8件が新たに登録された。高山社を創設した高山長五郎の墓(同市高山)をはじめ、同社の分教場蚕室として使われた縫島家住宅(同市中)などが含まれている。

福島元七顕彰碑(同市藤岡)は、桑の葉を刻む桑刻機を1900(明治33)年に発明した福島をたたえる。高山社が提唱した「清温育」は蚕の成育段階で与える桑の大きさを変えており、桑刻機は農家の負担を大きく減らした。

また、諏訪神社(同市藤岡)の宮神輿(みこし)や常夜燈(とう)、手水(ちょうず)石は江戸時代後期、藤岡の絹市に出店して繁盛した呉服問屋、三井越後屋が奉納したものだ。

県藤岡行政県税事務所は市の協力で近く藤岡の絹遺産周遊マップを発行する予定で、同市教委文化財保護課は「高山社跡を訪れる人たちにほかの絹遺産もPRしたい」と話している。

同市以外の文化財未指定物件では、桐生織ゆかりの桐生織塾と白瀧神社(いずれも桐生市)、養蚕家屋の渡辺家住宅(玉村町)が登録された。

◎再評価し後世に

ぐんま絹遺産は世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」の4資産だけでなく、県内の埋もれた絹遺産を再評価し、地域で活用しながら後世に残していこうとする制度。所有者が公開に同意した候補を市町村が申請し、専門家らによるぐんま絹遺産推進委員会で審議後、知事が登録する。

前年度は1次、2次合わせて58件が登録された。県は文化財指定の有無にかかわらず貴重な物件の発掘に努める方針で、「きちんと調査して価値が明らかなことが必要。ぐんま絹遺産が調査研究のきっかけになれば」(世界遺産推進課)と期待する。

県は市町村が行う絹遺産登録の調査研究や保存・活用計画の策定などの費用を助成。絹遺産をパンフレットやホームページを通して県内外にPRしている。明治期のれんが造り建物だったり織物遺産に絞るなど、多様な周遊コースの素材を提示して絹遺産のネットワーク化につなげていく。

同課は「身近な絹遺産を訪ねて養蚕、絹の素晴らしさに触れることで県民としての自信を持ってほしい」と話している。

ぐんま絹遺産3次登録一覧
  • ①彦部家住宅(桐生市広沢町)国重文
  • ②八幡八幡宮唐銅燈籠(高崎市八幡町)市重文
  • ③旧大間々銀行本店および土蔵(みどり市大間々町大間々)市重文
  • ④金善ビル(桐生市本町)国登録有形文化財
  • ⑤雲越家住宅(みなかみ町藤原)国重要有形民俗文化財
  • ⑥下南室太々御神楽の養蚕の舞(渋川市北橘町下南室)県重要無形民俗文化財
  • ⑦南牧の養蚕・繰糸・機織用具(南牧村羽沢)国登録有形民俗文化財
  • ⑧日本織物株式会社発電所跡および煉瓦積遺構(桐生市織姫町)市史跡
  • ⑨桐生市桐生新町重要伝統的建造物群保存地区(桐生市本町と天神町)国重伝建
  • ⑩桐生織塾(桐生市梅田町)
  • ⑪諏訪神社常夜燈および手水石(藤岡市藤岡)
  • ⑫縫島家住宅(藤岡市中)
  • ⑬町田菊次郎生家宅(藤岡市本郷)
  • ⑭渡辺家住宅(玉村町福島)
  • ⑮諏訪神社宮神輿(藤岡市藤岡)
  • ⑯白瀧神社(桐生市川内町)
  • ⑰高山長五郎功徳碑 附正門・寄附者名板(藤岡市藤岡)
  • ⑱高山長五郎の墓(藤岡市高山)
  • ⑲福島元七顕彰碑(藤岡市藤岡)
  • ⑳町田菊次郎頌徳碑(藤岡市藤岡)

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)