《重大ニュース 2012》(1)製糸場の世界遺産推薦決定 本登録へ態勢づくり
- 掲載日
- 2012/12/20
世界文化遺産への推薦了承を受けて、富岡製糸場で万歳する関係者=7月12日
乗客7人が死亡した関越道のツアーバス事故や利根川水系の水質汚染など、2012年は県民に不安を抱かせる事故が相次いだ。一方で、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界文化遺産登録に向けて大きく前進し、ロンドン五輪で本県関係選手を含む日本勢が活躍するなど明るい話題もあった。県内の1年を振り返る。
7月12日夕、富岡製糸場の東繭倉庫前に集まった市民ら約100人がその時を待っていた。本県の世界文化遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」の国連教育科学文化機関(ユネスコ)への"推薦内定"を告げる祝砲が鳴り響くと、歓声と拍手が湧き起こった。「長年の夢がかなった。本登録に向けて力を合わせよう」。関係者は万歳をして吉報を喜んだ。
国内審査の第一関門となる文化審議会の特別委員会がこの日、4資産で構成する同遺産群のユネスコへの推薦を了承した。高品質な生糸の大量生産を実現し、世界の絹産業の発展や絹の大衆化に貢献した価値を認めた。養蚕、製糸、織物の一連の絹産業が息づく「絹の国」の歴史を代表する同遺産群が、2014年登録に向けて大きく前進した。
政府は8月、推薦を正式決定。9月に暫定推薦書をユネスコに提出した。
推薦決定後、富岡製糸場では見学者が急増。観光シーズンの10、11月にはそれぞれ約4万3千人が来場し、平日も千人以上が訪れた。関西の旅行会社が製糸場を含むツアーを企画するなど全国的に関心が高まり、今月2日の時点で昨年度の年間来場者数23万1391人を超えた。
田島弥平旧宅(伊勢崎市)、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)の3資産でも見学者が増えている。11月に京都で開かれた世界遺産条約採択40周年の記念会合では遺産の持続可能性が主要議題となった。県世界遺産推進課は「長期的に観光客が訪れることが資金面でも遺産維持に必要。来場者をどう受け入れて遺産の保護、活用につなげるか考える時期だ」と受け止める。
京都会合後、ユネスコ本部があるパリ駐在のユネスコ日本政府代表部の木曽功特命全権大使が富岡製糸場などを視察。「自信を持って各国に近代化遺産をPRしたい」と評価した。
登録に向けた作業は大詰めの段階を迎えている。正式版推薦書は今月12日の文化審で了承され、政府が来年2月1日までにユネスコへ提出する。夏には諮問機関が現地調査に入り、14年夏の世界遺産委員会で登録の可否が審議される。県や関係市町は現地調査に向けた資産の環境整備を急ぐとともに、観光客の受け入れ態勢づくりを住民と連携して進めていく。