激動の12年に幕 未来につながる新年に
- 掲載日
- 2012/12/31
激動の12年に幕 未来につながる新年に
明かりがともり始めた夕景の市街地で、ライトアップされた赤れんがの富岡製糸場東繭倉庫がその威容を際立たせる=写真。国は8月、「富岡製糸場と絹産業遺産群」を世界文化遺産登録に推薦すると正式に決定、登録実現に向けて大きく前進した。
官営富岡製糸場は殖産興業の原点だ。日本の近代化を象徴する赤れんがが再び脚光を浴び、その歴史的役割をあらためて世界に認めてもらう―。10年に及ぶ運動で県民が描いてきた夢が、ぐんと近づいた。
スポーツは明るい話題が多かった。夏のロンドン五輪で日本勢が活躍し、県勢選手も銀と銅のメダルを獲得。春の選抜高校野球大会は健大高崎と高崎の2校が出場し、健大高崎が県勢として34年ぶりに4強入りした。
県民を暗鬱とさせる事件事故も相次いだ。4月には関越道で高速ツアーバスが防音壁に激突、乗客7人が死亡する大惨事となった。利根川水系では5月、水質事故から本県を含む5都県で取水停止や断水。創造学園大などを運営する学校法人に対し国は10月、解散命令を出す方針を表明し、学生や保護者らに混乱が広がった。
福島第1原発事故で拡散した放射性物質との格闘は続いた。食品の出荷停止や風評被害は農家や観光関係者を今も苦しめる。高濃度に汚染された指定廃棄物の処分場建設は見通しすら立たない。
29年ぶりの「師走選挙」となった衆院選は自民、公明両党が圧勝して政権を奪還、本県は5小選挙区を自民が独占した。円高とデフレに苦しむ経済の再生など重い課題を背負って発足した安倍内閣に山本一太沖縄北方担当相と旧倉渕村(現高崎市)出身の下村博文文部科学相が入閣した。
激動の1年が終わる。140年前、先人が英知を結集して築いた赤れんがの富岡製糸場は、県民の夢や希望が着実に積み上がり、2013年に、そして未来につながることを示している。