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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

春秋館文書 町重文に 下仁田町 荒船風穴 運営事務所 営業案内や名簿 役割今に伝える

町重要文化財に指定された春秋館営業案内
町重要文化財に指定された春秋館営業案内

下仁田町教委は23日、明治後期から昭和初期にかけて蚕種を貯蔵した荒船風穴の運営事務所「春秋館」(同町西野牧)に残されていた文書1081点を町重要文化財に指定した。

荒船風穴の概要や地図が書かれた「春秋館営業案内」、蚕種を預けた人の名前や地域を記した「イロハ順芳名簿」などがあり、町教委は「当時どのように風穴を運営していたかを示す貴重な史料」としている。

春秋館は、養蚕農家でつくる組合製糸・下仁田社の取締役で荒船風穴を建設した庭屋静太郎の自宅。全国各地の風穴は小規模な個人経営がほとんどだったが、庭屋は春秋館に貯蔵部、製造部、委託販売部を設置。7キロほど離れた風穴管理棟と春秋館を私設電話で結び、上野鉄道下仁田駅と高崎駅に荷受所を設けて全国からの依頼に対応した。

1911(明治44)年の「春秋館営業案内」には、営業期間の2~9月の風穴内部の平均温度が表で示されており、岩の隙間から吹き出す現在の冷風の温度が当時と変わらないことが分かる。蚕種を預けた人や量を記録した22年の「イロハ順芳名簿」には、朝鮮半島の蚕種を預かった記録があり、広範囲にわたって取引していたことが分かる。

文書は、庭屋の孫を叔母に持ち、春秋館を管理している同町西野牧の今井康雄さん(64)が2010年に町に寄贈。町ふるさとセンターで保管し、町教委が調べていた。

同センターの秋池武所長は、荒船風穴が「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産の一つであることに触れた上で「世界遺産に登録されれば観光客も増える。風穴の価値や果たした役割を細かく正確に伝えるために、史料の分析を進めたい」と話している。

町指定の重要文化財は計15件で、文書の指定は初めて。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)