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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

《ひと紡ぎ まち紡ぎ・・・絹遺産と歩む・・・第1部 文化の継承 》(6)候補から外れた資産 価値信じ住民結束

六合赤岩養蚕農家群で「住民が守り抜いてきた農家群の価値は変わらない」と話す篠原さん
六合赤岩養蚕農家群で「住民が守り抜いてきた農家群の価値は変わらない」と話す篠原さん

2011年10月、県は「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産を7件から4件にすることを決めた。外れたのは、核となる富岡製糸場と密接な関わりが確認できなかった3件。「(外れた)3資産も非常に良いが、推薦書のストーリーを組み立てる上で難しい」(岡田保良・県世界遺産学術委員会委員長)という苦渋の決断だった。

◎平泉の落選

本県の絹産業遺産群が、世界遺産国内候補を示す暫定リストに記載されたのは07年。構成資産は10件だった。その後08年、"平泉ショック"に見舞われる。周辺資産を数多く取り込んだ「平泉」(岩手県)が、ユネスコの審査で"落選"。戦略の練り直しを迫られた県が、候補を絞り込む過程で世界遺産という目標を失った住民組織がある。

その一つ、鉄道遺産群を愛する会は碓氷峠鉄道施設(安中市松井田町)の価値を広めようと09年に誕生した。候補から外れると、会は「追加登録」に向けてかじを切った。手本は落選後、再挑戦で世界遺産に登録された平泉だ。一度外れた遺跡や寺跡の追加登録に向けた運動を進めている。

「信州から横浜に生糸を運び入れ、絹産業を流通の面で支えた貴重な遺産の一つ。現時点で外れているとはいえ、価値は変わらない」。会長の矢野薫さん(64)=同市磯部=は将来の復活という青写真を描き、講演会や鉄道施設を歩くイベントを従来通り続ける。逆境の中で会員は増え、1300人を超えた。

一方、06年に県内初の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された六合赤岩養蚕農家群(中之条町赤岩)。「長年住民が守り抜いてきたのが、この養蚕農家群。地区全体で環境を守ろうという意識は今も持ち続けている」。ここも候補から外れた資産だが、赤岩ふれあいの里委員会会長の篠原辰夫さん(72)=同町赤岩=は胸を張る。

登録運動に合わせて、集落が一体となって取り組んできた農家群の案内や座繰り体験、蚕の飼育―。その積み重ねは地域に結束をもたらした。「(富岡製糸場が)世界遺産になれば、赤岩の養蚕農家群にもっと光が当たる」。地区の未来に篠原さんは期待する。

◎点から線へ

県は11年、碓氷峠鉄道施設、六合赤岩養蚕農家群のほか、薄根の大クワ(沼田市石墨町)、富沢家住宅(中之条町大道)など構成資産から外れた絹遺産や地域の養蚕、製糸、織物関連施設をネットワーク化する「ぐんま絹遺産」の構築に乗り出した。

世界遺産候補の4資産だけでなく、県民の足元にある絹遺産に光を当てるのが狙いだ。そのために欠かせないのが絹遺産を抱える住民が市町村の枠を超えて連携し、点を線へとつないでいく取り組みだろう。ぐんま絹遺産を影にしてはならない。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)