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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

《ひと紡ぎ まち紡ぎ・・・絹遺産と歩む・・・第1部 文化の継承 》(9)重伝建指定の織都 「先」模索する市民

本町2丁目の重伝建の町並み。れんが造りの蔵は、ギャラリーとして活用されている
本町2丁目の重伝建の町並み。れんが造りの蔵は、ギャラリーとして活用されている

のこぎり屋根の織物工場や蔵、洋館、そして桐生織―。織都・桐生には数多くの絹産業遺産が残る。重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に昨年指定された桐生市本町1、2丁目の町並みや買場紗綾(さや)市、祇園祭の屋台も絹産業の隆盛があったからこそ生まれた。

◎推薦見送り

本町1、2丁目の建造物群については、かつて世界遺産候補に含めようとする動きがあった。しかし、まずは重伝建で国のお墨付きを、などの理由で市の推薦が見送られた経緯がある。重伝建の指定を得た今、市民は世界遺産運動とどう関わろうとしているのか。

本一・本二まちづくりの会理事長として、重伝建運動をリードした森寿作さん(72)は「世界遺産を視野に富岡製糸場など他の絹遺産と連携していく。民間と行政が話し合ってまちをつくりたい」と展望する。

同会は群馬大工学部教授、宝田恭之さんを講師とした講座「工学よもやま話」を集会所で定期的に開いている。「群馬大との交流を進めることで、人材育成も図れる。まちづくりは人づくりから」と森さんは信念を語る。

歴史ある地域を愛する気持ちは子どもたちに浸透してきた。重伝建が校区内にある北小では6年生が総合的な学習の時間を使い、地域の歴史を学んでいる。街並みや織物工場を見学し、パンフレット製作や町のガイドを体験。「わたしたちの地域から桐生のまちが広がった」と誇らしげに父母に説明する児童もいる。

「市内の絹遺産を集積し、『織物都市』として世界遺産へ挑戦を」。北川紘一郎さん(72)=同市本町1丁目=は世界遺産にこだわって2006年、桐生・世界遺産の会を結成した。講演会やパネル展といった市民への啓発活動のほか、行政への提言書を企画している。

◎使えば残る

市は重伝建を足掛かりに、市内に点在する産業・文化遺産を保存活用して街並みを整備する「歴史まちづくり法」の計画認定へ着手する。歴史を重視する姿勢は行政も市民も一致しているものの、「その先」となると市民の足並みは必ずしもそろっていない。

織都を象徴するのこぎり屋根工場の数は減っているが、まだ200棟弱が残る。高い天井を持ち、北側の天窓から安定した光が入ることから、アトリエとして適しているという。

「産業遺産は使えば残る」。北川さんは2000年から自宅の工場を創作の場「無鄰館」として提供。「5人ずつ1棟に呼べば、桐生で千人のアーティストがそろう」と持論を展開する。

 のこぎり屋根の工場を芸術家たちが活用する取り組みは、徐々に広がっている。歴史と伝統に囲まれて生きる市民は、これから重伝建後のデザインをどう描いていくのだろうか。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)