群馬の絹NYで染色 来月、明治の文様を再生 「世界遺産登録を応援」 高崎の江戸小紋作家 藍田正雄さん、愛郎さん
- 掲載日
- 2013/02/09
米国での実演で使用する復刻した型紙のコピー
江戸小紋作家、藍田正雄さん(73)=高崎市足門町=と弟子の藍田愛郎さん(34)=同=が3月16日、米国ニューヨークの国立デザイン博物館で、同館所蔵の「伊勢型紙」の復刻版を使って染色の実演を行う。本県産の絹を素材にして熟練の手仕事を披露する2人は「(富岡製糸場と絹産業遺産群の)世界遺産登録運動の応援になれば」と意欲を語っている。
正雄さんらが染色実演で使うのは、2羽のクジャクが描かれている伊勢型紙。当時の流行などから明治期のものとみられる。クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館の300枚を超えるコレクションの中から、同館が指定した1枚を三重県鈴鹿市の突き彫師、内田勲さん(68)が写真を基に小刀で彫って復刻した。
当日は、正雄さんと愛郎さんがこの復刻型紙で反物のほか、本県産生糸で作ったスカーフを100枚程度染め、明治の文様をよみがえらせる。完成品はすべて博物館に収めるが、展示や販売も予定されているという。
「実演がアメリカでどのように受け入れられるか勉強してきたい」と話す正雄さん(右)と愛郎さん
伊勢型紙は江戸時代に普及した着物の型染め用の型紙で、19世紀末から20世紀初めに「ジャポニスム」がブームになった欧米諸国では美術品として盛んに収集された。
正雄さんは型染めの渡り職人だった父の影響で、8歳からへらを持った。木目のようなモアレ(うねり)を表現した「板引き杢(もく)」など独自の技法も開発している。
「養蚕農家や桑畑がある中で暮らしていたこともあり、糸への愛着を感じていた」(正雄さん)ことから、一貫して群馬の絹を使ってきた。米国をはじめ、フランス、オーストラリア、中国といった海外でも、実演や講演を通じて"純群馬産"の絹のアピールを続けている。
「養蚕農家や桑畑がある中で暮らしていたこともあり、糸への愛着を感じていた」(正雄さん)ことから、一貫して群馬の絹を使ってきた。米国をはじめ、フランス、オーストラリア、中国といった海外でも、実演や講演を通じて"純群馬産"の絹のアピールを続けている。
型紙の復刻とそれを使った染色の実演事業は、同博物館所蔵の型紙を調査してきた三重県立美術館が企画。型紙を見ただけでは十分に伝わらない日本伝統の染色文化を理解してもらうのが狙いだ。
正雄さんの後継者、愛郎さんは「親方のやることを一つ一つ目に焼き付け、外国人の反応などを肌で感じてきたい」と楽しみにしており、正雄さんは「江戸小紋の将来を担う若い世代のためにも、海外での可能性を見いだすきっかけにしたい」と張り切っている。
あいだ・まさお 1940年、茨城県生まれ。3歳の時、型染めの渡り職人だった父が高崎に転居し工房を始める。56年から東京の染色工房などで修業し、77年に旧群馬町で工房を構える。日本伝統工芸染織展で文化庁長官賞など受賞多数。99年に県指定重要無形文化財保持者に認定される。日本工芸会正会員。