シルクカントリー in 藤岡 “絹の国”支えた高山社 スタディーバスツアー
- 掲載日
- 2013/02/10
富岡製糸場で解説員の説明を聞くバスツアー参加者
シルクカントリーin藤岡では、ぐんま絹遺産と世界遺産候補を巡る二つのスタディーバスツアー、近代的な養蚕技術を全国に広めた高山社を紹介する企画展などが開かれ、来場者は藤岡市と周辺に残る絹遺産が果たした役割について理解を深めた。
高山社跡を含む市内の絹遺産に関する展示物が並ぶ企画展
【ぐんま絹遺産コース】歴史の重み あらためて
スタディーバスツアーの「世界に誇る絹遺産コース」は9日、藤岡市役所を発着点に行われた。32人が近代的な養蚕技術を全国に広めた高山社跡(同市高山)をはじめとした各施設の歴史や意義を学んだ。
一行はまず高山社の創設者である高山長五郎の実弟、木村九蔵が創設した競進社模範蚕室(埼玉県本庄市)を見学した。
昼食の後、藤岡歴史館(藤岡市白石)に移動し、高山社跡を含む市内九つの「ぐんま絹遺産」などを紹介する企画展に興味深そうに見入った。
高山社の2代目社長、町田菊次郎生家(同市本郷)では、高山社を考える会のボランティア解説員4人が養蚕施設でもあった生家について説明。ひ孫の町田英子さんも分教場時代の写真を示しながら、当時の様子を語った。
神保明子さん(64)=富岡市七日市=は「素晴らしい絹遺産を見られた。世界遺産登録が、ますます楽しみになった」と期待していた。
町田菊次郎生家を見学する一行
【世界遺産候補コース】富岡製糸の規模に感嘆
スタディーバスツアーの世界遺産候補コースには37人が参加した。「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産のうち、冬季閉鎖中の荒船風穴(下仁田町)を除く、田島弥平旧宅(伊勢崎市)と富岡製糸場(富岡市)、高山社跡(藤岡市)を順番に見学した。
一行は高崎駅からバスに乗り、車中で富岡製糸場世界遺産伝道師協会の会員から世界遺産に関する説明を受けながら見学先を移動。現地では、地元ボランティア解説員から史跡の価値や生糸の大量生産に果たした役割について話を聞いた。 富岡製糸場では繭倉庫や繰糸場、ブリュナ館を見て回り、建物の規模や建築技術に「すごい」と感嘆の声を上げていた。
製糸場以外の構成資産を見学するのは今回が初めてという参加者もいた。金子正行さん(72)=高崎市飯塚町=は「それぞれの絹遺産のつながりを見て、すばらしさに感動した。世界遺産になれるように応援している」と話した。
高山社の分教場を紹介するパネル展
◎長五郎の家族肖像画初公開 17日まで藤岡歴史館で企画展
藤岡歴史館(藤岡市白石)では17日まで、関連イベントとして企画展「『高山社』と藤岡の『ぐんま絹遺産』」が開かれている。世界文化遺産候補の高山社跡と昨年11月にぐんま絹遺産に登録された市内八つの絹遺産の関連資料42点が並び、訪れた人の目を引いている。
企画展では、高山家から市が譲り受けた桑籠などを持つ女性を表現したらでん細工、高山長五郎の妻や長女らの肖像画が初めて公開された。
藤岡出身の発明家、福嶋元七が明治期に改良を加えて専売特許を取得した桑の葉を適当な大きさに刻むための道具「福嶋式桑刻機」も置かれている。
このほか、ぐんま絹遺産に登録された「諏訪神社宮神輿(みこし)」といった市内の絹遺産もパネルで分かりやすく紹介している。
◎養蚕広めた分教場を紹介 きょうまで高山社跡でパネル展
世界文化遺産候補の高山社跡(藤岡市高山)の母屋兼蚕室で9、10の両日、高山社の分教場に焦点を当てたパネル展「高山社と分教場」が開かれている。
大正時代の最盛期に県内外の116カ所にあった分教場のうち、藤岡近隣の13カ所を平井・日野、美土里、美九里、新町・小野の地区別に紹介。分教場卒業生の記念写真や蚕室写真とともに経営者や場所、開設年代を記している。
会場では「高山社を考える会」のメンバーが、高山社で学んだ生徒が社員として各地で分教場を開き、近代養蚕技術「清温育」を実践する蚕室構造を広めたことを説明した。
1895(明治28)年に開設された高山分教場はすぐ近くにあり、解説員がパネルの奥に見えることを話すと来場者は興味深そうに視線を向けていた。
高山社跡を初めて訪れたという佐々木恵子さん(36)=渋川市金井=は「友達とあす富岡製糸場を見に行くので、よい下調べになりました」と話していた。