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染色アーティスト 大竹 夏紀さん ろうけつ染め 絹にアイドル 日本絹の里で27日から展示 「あこがれ、理想 表現」

ろうけつ染めで、アイドルや花などを表現する大竹さん
ろうけつ染めで、アイドルや花などを表現する大竹さん

伝統技法のろうけつ染めで絹の布に鮮やかに女性アイドルを描く染色アーティスト、大竹夏紀さん(30)。昨年秋、東京から出身地の富岡市に拠点を移し、県内発表の足がかりとなる作品展「絹・未来へ」が、27日から日本絹の里(高崎市金古町)で開かれる。秋には県立近代美術館(同市綿貫町)で個展も予定しており、「自分のあこがれや理想を表現した」という力強い作品が公開される。

絹の里では、特別展「絹とアジアの民族衣装~蚕からの贈り物」の一角に「twinkle・さき」(65×48センチ、2012年)、アイドルの語源に由来する作品名の「idora specus #2」(190×270センチ、09年)など大小5点を展示。赤や青、オレンジといった鮮やかな色使いのリボンや花飾り、アクセサリーに囲まれた若い女性をアニメ風に表現している。

ろうけつ染めは、溶かしたろうで輪郭線を引いて防染し、染料で着色後、ろうを溶かして下地を浮かび上がらせる染色技法。大竹さんは多摩美大でさまざまな染色技法を学んだ後、「上品な光沢の絹が一番鮮やかにアイドルを描ける。ろうが乾かないうちに素早く線を引く技法も自分に合っていた」と、同大大学院で技術に磨きをかけた。

大作は 少女の頭や体、飾りなどに分割して制作する。絹の布は通常幅1・2メートルまでしか作れないため、裏地を貼り背景を切り取ったパーツを組み合わせて作品に仕上げる技法を 独自に考案した。「絹でこんな表現ができることを知ってほしい」とアピールする。

日本絹の里に展示する「idora specus #2」(190×270センチ、2009年)
日本絹の里に展示する「idora specus #2」(190×270センチ、2009年)

10年に東京モード学園のテレビCMに作品が採用され、若手作家の一人として知られるようになった。11年秋にドイツ・ミュンヘンで個展を開いた際は、アニメ文化の延長でなく絵として評価されたことが自信につながった。都内の活動を切り上げて昨年9月、古里富岡にアトリエを構え、ことし2月には染め教室を開いた。「愛着がある地元の人に作品を見てもらえるのがうれしい」と喜ぶ。

近代美術館では9月7日~12月15日、幅5メートルほどの新作を含む約10点を飾る。7月に都内の画廊で開く個展出品作や同学園のCMに使われた作品も並べる予定で「初めての美術館展示なので、チャンスを生かしたい」と気持ちを高めている。

同館学芸員の田中龍也さんは、伝統技法を現代アートに生かし、極めて明るい色彩で見る人に訴えてくる力強さを評価。「現在はかわいいアイドルを描いて注目されているが、今後は女神のような深い精神性まで伝えていけるかが問われる」と飛躍を期待している。

日本絹の里の「絹・未来へ」展は6月3日まで。観覧料は一般200円、大学・高校生100円。火曜休館。問い合わせは同館(TEL:027・360・6300)へ。

おおたけ・なつき 1982年富岡市生まれ。東京農大二高、多摩美術大卒。08年に同大大学院デザイン専攻テキスタイルデザイン修了。12年9月、富岡にアトリエを構える。

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