富岡製糸の登録前進 現地調査へ対策強化 イコモス審議は来年
- 掲載日
- 2013/05/02
ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)が、世界文化遺産登録を目指す「富士山」を条件付きで登録、「武家の古都・鎌倉」を不登録とするよう勧告したことで、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の審議が予定通り2014年に行われることがほぼ確実になった。県は1日、明暗を分けた両候補の勧告内容を精査し、夏にも実施されるイコモスの現地調査に生かせるよう検討を開始した。(関連記事 2、3、19面)
今回の勧告で県が注目したのは、鎌倉が武家の古都としての価値を示す具体的な物証が足りないと指摘されたことと、富士山から離れた三保松原を構成資産から除外するよう勧告されたことの2点。県はイコモスの評価が核となる資産の存在と、構成資産との強い関連性を重視する傾向にあると見る。
富岡製糸場と絹産業遺産群に置き換えると、核となる富岡製糸場が存在することはイコモスの評価傾向に合致。構成4資産が絹の大量生産を可能にした点で強い結びつきがあることも好材料だ。県世界遺産推進課の松浦利隆課長は「絹産業遺産群は富士山と同様、製糸場という中心となる核資産があり分かりやすい」と話し、登録に自信を見せる。イコモスから構成資産の除外を求められる可能性については「その心配がないように、顕著な普遍的価値を推薦書で示した」と説明する。
県は国外候補も含めて、約30件の勧告内容をすべて詳細に分析し、今後の登録活動に生かす。まずは夏にも行われる現地調査の対応に万全を期す構えだ。
文化庁による同日未明の記者会見後、記念物課の榎本剛課長は富岡製糸場について「既存のスケジュールに沿って進めていきたい」と話し、予定通り14年の審議に掛ける方針に変化がないとの認識を示した。同課世界文化遺産室の小林万里子室長は「記載(登録)となった富士山でさえ、保全への注文が付いた。イコモスの審査の厳しさをあらためて感じた」と述べ、登録のハードルの高さを指摘した。
富岡製糸場については今後、8、9月頃にイコモスが構成4資産を現地調査。来年1月末までに修正などの追加情報提出を要請されることもある。5月頃にイコモスが評価結果を勧告。6~7月に予定されるユネスコ世界遺産委員会で登録の可否が最終決定する。