歴史的景観 後世に 修復費、最高300万円助成 街道沿い 市街地の町屋 養蚕農家 高崎市が独自登録制度
- 掲載日
- 2013/05/09
高崎市は8日までに、古き良き町並みや古里の景観を後世に残すため、「歴史的景観建造物登録制度」を創設した。町屋や養蚕農家など歴史を感じさせる建造物を地域のシンボルと位置付け、外観の修復費用を助成することで所有者の継続使用を後押しする。歴史ある建物や町並みの保存には文化財指定や国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)への選定があるが、暮らしに密着した風情ある建物が次々と姿を消す中、独自制度で保存に乗り出した。
対象は街道沿いや市街地の町屋、郊外に点在する養蚕農家など個人所有の建物。景観を構成する敷地内の塀や門、蔵なども対象となる。原則として築50年以上で、所有者に維持管理と活用の意思があることが条件。すでに重要文化財や景観重要建造物に指定されていたり、登録有形文化財は対象外とする。
市は所有者からの申請を受けて現地調査を行い、景観審議会で審議の上、「歴史的景観建造物」として登録する。これらの建造物については保全のための無料相談を実施する。さらに景観的価値が高いと認定された建造物は屋根や外壁などの修復工事費の3分の2(上限300万円)を助成。助成を受けた場合は、10年程度の保全と活用を義務付ける。市は本年度当初予算に1千万円を計上、来年度以降も継続して取り組んでいく方針。
2000年度に実施した調査では、合併前の旧市域に養蚕農家の外観を残す建物が700軒弱あった。旧郡部では7年ほど前、約400軒を確認している。
富岡製糸場と絹産業遺産群の世界文化遺産登録の審議が14年に迫る中、点在する養蚕農家も絹の文化を伝える貴重な役割を担っているが、「現実には老朽化や維持の困難さから、次々と取り壊されているのが実情」(市都市計画課景観室)だ。
今回の登録制度で市は、南大類町や根小屋町、箕郷町の矢原宿周辺、吉井町などに比較的多く残る養蚕農家をはじめ、宿場町として栄えた倉賀野町などの風情ある古民家の登録を促し、保存していきたい考え。6月14日まで申請を受け付けている。
県教委文化財保護課は「歴史的な景観や風情を残す取り組みは、観光資源の掘り起こしや地域の価値を高めることにつながる」として、市独自の施策を歓迎している。