「日本遺産」を創設 海外発信へ政府検討 富岡製糸、対象に
- 掲載日
- 2013/05/15
世界文化遺産暫定リスト記載の国内候補
政府が、世界遺産登録を目指す地域を「日本遺産」と総称し、観光資源として活用する制度の創設を検討していることが14日、分かった。日本文化を海外に売り込む「クールジャパン」戦略の一環。分かりやすい呼び名でPRして外国人観光客を呼び込むとともに、登録に向けアピールする狙いがある。制度がスタートする時期にもよるが、2014年の世界文化遺産登録を目指す本県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」も登録前ならば対象となる見込みで、海外からの誘客につながりそうだ。
対象は、世界文化遺産を目指して国連教育科学文化機関(ユネスコ)の暫定リストに記載されている国内候補などを想定。暫定リストには現在、世界遺産登録がほぼ確実となった「富士山」(山梨県、静岡県)など計13件がある。日本遺産に認める条件や、審議会の審査を踏まえるかどうかなど、詳細は今後検討する。
「日本遺産」の構想は、文部科学省の文化審議会内で以前から浮上していた。ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が「鎌倉」(神奈川県)について世界文化遺産への登録見送りを勧告したこと、暫定リストには1992年に記載されたが審議されないまま20年が過ぎた「彦根城」(滋賀県)などがあり、登録までの期間が長期化する懸念から、日本遺産の創設が具体化したとみられる。
文化庁幹部は「(日本遺産は)暫定リスト記載の候補を海外に紹介するキャンペーン」としてPR戦略であることを強調しており、新たな文化財保護制度とはしない見込み。
クールジャパン戦略をめぐる議論では、現行の重要文化財を国宝に一本化することで海外に日本文化をアピールする案も出ていた。しかし、文化財の体系を大幅に変更することになるため、実現は困難な見通しとなっている。
菅義偉官房長官は14日の記者会見で「国としてお墨付きを与えることで国際的な知名度を高めるとともに、世界遺産登録を後押ししたい」と述べた。
◎世界遺産へ弾みを 地元期待
2014年の世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」については、今夏にも国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査が行われる予定になっている。県は「富士山」や「鎌倉」などことしのイコモスの勧告内容を精査して、現地調査への準備を進めている。
政府が世界文化遺産登録を目指す地域を「日本遺産」と総称して活用する制度を検討していることについて、県世界遺産推進課は「まだ不明な部分はあるが、富岡製糸場は来年の世界遺産登録を目指している。日本遺産が登録の力になる制度であれば歓迎したい」としている。
富岡製糸場世界遺産伝道師協会の近藤功会長は「富岡製糸場と絹産業遺産群が、世界遺産の前に日本遺産に登録されることを願っている」と話した。