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《人ひと》 初の美術専門の館長 地域に根差す施設に 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館長に就任した染谷滋さん

富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館長に就任した染谷滋さん(60)
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館長に就任した染谷滋さん(60)

「美術の世界は音楽と同様、誰でも楽しめる。作品の意味をすべて理解できなくても、好きか否かでいい。気兼ねなく、多くの人に足を運んでもらいたい」

4月から富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館長を務めている。学芸員として二つの県立美術館に勤務し、館林美術館長を最後に定年退職。長年、美術館運営に関わった手腕から、市が招いた。館林で取り組んできた「地域に根差したミュージアムづくり」は、富岡でも重要なテーマになる。

1995年に開館した富岡市立の同館は、地元出身の洋画家、福沢一郎の絵画をはじめとする近現代美術作品や、地域の考古・歴史民俗資料を収蔵する総合ミュージアム。館長は郷土史家の今井幹夫さん(現・富岡製糸場総合研究センター所長)が約13年間務めたほかは、課長級の市職員が就いてきたため、初の美術専門の館長となる。

とかく敷居が高いと思われがちな美術館だが、前任地では学校や地域との連携を意識して企画展に取り組んだ。美術館や博物館では展示だけでなく、作品と資料の収集、適切な保管も重要な務め。「ミュージアムは地域の文化や歴史を後世に託す器。この施設に訪れるということは、地域の宝物を大切にすることと同義」という。

富岡市では富岡製糸場の世界遺産登録を見据えた地域づくりが急ピッチで進む。「前向きに伸びようとする街の勢いを感じて楽しみ」と目を輝かせる。

自身が専門とする近代日本洋画は、日本人の美術に対する意識が大きく変わった明治時代以降の油絵を指し、近代産業の象徴である富岡製糸場と同時代。近代化を目指した明治の絵画を地域の人に紹介したいと考えている。

兵庫県西宮市生まれ。東京大文学部美術史学科卒業。県立近代美術館、県立館林美術館の学芸員を経て2010年から館林美術館長。ことし3月に定年退職。前橋市在住。

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