善意の心で整備 企業や県民から「15億円目標に」 富岡製糸場を愛する会
- 掲載日
- 2013/05/21
2014年の世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」を後押ししようと、NPO法人富岡製糸場を愛する会(高橋伸二理事長)は20日までに、企業や県民から15億円を目標に製糸場の保存整備に活用するための寄付を募る活動に乗りだした。100億円以上とされる保存整備費の一部を県民主体で拠出する姿勢を示すことで、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が夏にも予定している現地調査での評価向上に寄与したい考えだ。
愛する会は、寄付を呼び掛けるチームを編成し、富岡甘楽地域の 企業を中心に活動する。寄付金は市が設置した富岡製糸場基金に集約し、製糸場と周辺整備に活用してもらう。高橋理事長は「住民が地域の遺産を支える姿を示すことが重要」と 意義を説明している。
同基金は、製糸場の保存活用や周辺整備事業の財源とするため2008年に設立。製糸場の入場料収入の半額、ふるさと納税、寄付金を積み立てており、2011年度の残高は8100万円。
市は昨年度、富岡製糸場の整備活用計画を策定した。今後30年計画で、保管されている繰糸機の動態展示を柱に施設全体を整備する方針で、整備改修には100億円以上の費用が必要とされる。国と県の補助金を活用するが、市の負担金も25億円以上が見込まれている。
政府がユネスコに提出した推薦書は、地域の保存活動についても取り上げており、こうした活動は構成資産が国と地域で将来にわたって保護されていることを証明することにも結びつく。愛する会の活動について、県世界遺産推進課は「寄付活動を通じて製糸場への関心が高まるし、地元の熱意を示す意味ではユネスコやイコモスにも評価される。ほかの絹遺産など全県にも広がるといい」と期待している。
愛する会は、富岡製糸場の価値を後世に伝えていくため、片倉工業が操業を停止した翌年の1988年に発足した。2010年度にNPO法人化。会員数は17日現在で1255人。価値の啓発活動やイベント開催、清掃ボランティアなどに取り組んでいる。
◎ユネスコ登録審議 来月21~23日
6月にカンボジアで開かれるユネスコ世界遺産委員会で、「富士山」(山梨県、静岡県)を含む新規登録の審議が同月21~23日に行われる予定であることが20日、分かった。ユネスコがホームページで明らかにした。
富士山は、4月30日にユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)から世界文化遺産への登録を勧告されており、審議で正式決定する見込み。登録すべきでないと勧告された「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)も、政府が推薦を取り下げなければ同じ日程で審議される。
世界遺産委は、カンボジアの首都プノンペンで6月16~27日の日程で開催。新規登録の審議のほか、登録済みの世界遺産や、紛争などで危機にひんしている遺産の保全などを話し合う。
世界遺産委は世界遺産候補を「記載(登録)」「情報照会」「記載延期」「不記載(登録せず)」の4段階で評価。過去にイコモスの「情報照会」や「記載延期」勧告から巻き返して登録を決めたケースはあるが、登録勧告が覆されるケースはまれで、2014年の登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」の審議日程には影響しない見込み。