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養蚕”後継者”に期待 繭生産、桑栽培に企業参入

高齢化に伴って生産者が減少している養蚕に、企業の参入が相次いでいる。参入要件を緩和した改正農地法が後押しとなり、原料となる県産繭の将来的な調達に危機感を抱く化粧品メーカーなどが自ら生産に乗りだした形だ。養蚕農家らに対する国の補助金が本年度末で打ち切られ、農家の経営環境が一層厳しくなる中、養蚕の新たな担い手として期待されている。

化粧品製造販売の絹工房(富岡市)は本年度、桑園40アールで桑栽培を始め、来年度の養蚕事業開始に向けて準備を進める。6月からは社員を農家に派遣し、養蚕に必要な技術を習得させる。

せっけんなど自社製品の原料として現在は繭600キロを使っているが、増産に伴い2~3倍が必要となる。これに対し、市内の養蚕農家の平均年齢は75歳。将来にわたる繭の安定調達に不安があるため、自社で養蚕事業に乗りだすことにした。

7年後には大規模農家並みの繭生産量1トン、15年後には5トンへと増産する。当面は桑畑や蚕室を養蚕農家から借りるが、将来的に自社で「養蚕工場」を整備する。養蚕現場の見学や体験を受け入れたり、絹や桑を使った商品開発で需要を掘り起こすほか、2014年の世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」のお膝元となる「富岡産」ブランドをPRして、他社への繭販売も視野に入れている。

繭を原料とする化粧品などを販売するラヴィドール(前橋市)は12年度から沼田市で試験的に養蚕を始めた。本年度は24アールの畑に桑2千本を作付け。今後、繭生産を本格化させて、将来は自社商品の原料をまかなう計画。同社には高齢化した農家から「桑園を使ってほしい」との依頼もあり、養蚕"後継者"としての期待を感じるという。

茶製造のぐんま製茶(桐生市)は自社製品の桑茶に使う桑を栽培するため、ことし4月に農業生産法人を立ち上げた。当面は5ヘクタールで栽培するが、事業拡大に伴って数倍の規模を目指す。同社は「群馬の原風景である桑園を維持していきたい」としている。

◎農地法改正で急増

農地取得などについて企業参入要件を大幅に緩和した改正農地法が2009年に施行されて以降、企業の農業参入が急増している。県内では施行前に10社だったが、ことし3月末までで21社と倍増した。

県によると、参入企業のほとんどは野菜栽培が目的で、養蚕への参入はこうした企業が初のケース。

県内の繭生産量は年々減少し、12年度は80トンにとどまった。国の補助金は14年3月末で終了し、農家の高齢化や後継者不足も深刻だ。企業の相次ぐ参入は、将来にわたって本県の養蚕を守る一つの手だてにもなる。

県農政課構造政策室は、繭の用途や 販路を確保している企業が 養蚕に参入することについて、「産業としての養蚕を 守れる意義は大きい」と歓迎している。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)