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《ひと紡ぎ まち紡ぎ・・・絹遺産と歩む・・・第3部 地域振興》(2)高山社跡持つ藤岡 市街地誘客へ知恵

高山社のPRと市内の特産品販売の拠点として15日にオープンする会遊亭
高山社のPRと市内の特産品販売の拠点として15日にオープンする会遊亭

「高山社跡に来るのは富岡製糸場に行く人の1割。さらに藤岡の市街地まで来てくれる人はその1割いるかどうか」。藤岡市の幹部職員は、こう言ってため息をついた。

◎8㌔離れる

世界文化遺産候補、高山社跡(同市高山)は市街地から約8キロ離れた山中にぽつんとある。周辺に大きな集客を期待できる施設はない。このため市は高山社跡に来る観光客を市街地まで呼び込む戦略を描き、旅行会社や個人向けにアピールできる周遊ルートの設定を急いでいる。

「市街地に魅力がなければ素通りされる。結局、土産を買う場所といえば藤岡インターの道の駅『ららん藤岡』くらい。それで帰られてしまう」。市内の観光関係者は、起こり得る状況に危機感を募らせる。

訪れた人の足をいかに市街地に向けさせるか。江戸時代に絹市で栄えた藤岡市街地には、その名残として蔵造りの建物があちこちで見られる。藤岡商工会議所は観光拠点として、市中心部の旧履物店の蔵を改装して高山社跡をPRしたり、特産品を販売する施設「会かいゆう遊亭てい」を今月15日にオープンさせる。

現在、改装作業が急ピッチで進むが、課題は山積している。専用の駐車場はもとより、周辺には十分な広さの駐車場がなく、団体客を呼び込める大型バスをとめるスペースは見当たらない。

蔵で開発中の桑の実を使った菓子やシルク製品、藤岡に関する本を扱う計画があるものの、詳細はまだ固まっていない。会遊亭館長の田口宣雄さん(60)は「これまで市街地は 本気で観光をやって こなかった。まず動いてみて、応援してくれる人を 増やしていくしかない」と打ち明ける。

◎座談会で要望

5月11日、市内の諏訪神社(同市藤岡)の宮神輿(みこし)が東京・日本橋の神田祭に初めて参加。「233年ぶりの里帰り」として大きな話題になった。宮神輿は江戸時代、絹市を目当てに藤岡に出店し、成功を収めた三井越後屋が神社に寄贈したものだ。

神社は市街地南端にあり、境内には高山社を創設した高山長五郎の功徳碑と同社2代目社長を務めた町田菊次郎の頌徳(しょうとく)碑が並んで建つ。「市街地散策の核として、絹遺産でもある宮神輿(現在は非公開)を活用できないか」「高山社の知名度は高くない。案内板の整備を早急に進めてほしい」。5月下旬、市長が市民の声に耳を傾ける地区別座談会では市民から要望が次々と飛び出した。

市民団体「高山社を考える会」会長の小坂裕一郎さん(58)は訴える。「市街地では、高山社跡とは違うインパクトのあるものを見せなければならない。それを探りだす必要がある」。世界遺産登録に向け、千載一遇のチャンスを逃さず、観光の点を線につなげていくための模索は続く。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)