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《ひと紡ぎ まち紡ぎ・・・絹遺産と歩む・・・第3部 地域振興》(6)重伝建地区の活用 人の流れを商売に 

電動バスの観光客に桐生の重伝建の町並みを説明する清水さん(左から2人目)
電動バスの観光客に桐生の重伝建の町並みを説明する清水さん(左から2人目)

織都を象徴するのこぎり屋根の工場が残る桐生市本町1、2丁目。昨年7月、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定され、見学者は増えつつある。しかし、もともと観光地ではなく「受け入れるための整備はこれからの状態」(市観光交流課)。主幹産業だった織物業の衰退による人口減に悩む地域にとって、重伝建を生かした振興策に期待は膨らむ。

◎電動バスで

重伝建を核とした観光は、本町通りを中心とした町歩きが基本。人の流れを町中にどう呼び込むかが鍵で、その対策として市が打ち出したのが低速電動バスを活用した周遊型観光だ。

バスはNPO法人「桐生再生」(清水宏康理事長)を母体とする事業者が運営。ことし4月から実用化に向けた実験運行を始め、大型観光キャンペーンを控える秋までに駐車場を整備する。マイカーで来た観光客をバスで地区内に送り込み、ガイドの案内で見どころを巡ってもらう。

ただ、重伝建地区周辺には観光客向けの店舗が少なく、経済効果に結びつくほど環境は整っていない。「若者を呼び戻すには雇用の場が必要。注目が集まっている今こそ、新たな観光産業にシフトしなければ乗り遅れる」。同法人理事長の清水さん(66)は対応の遅れに危機感を募らせる。

一方、明治から昭和の養蚕家屋が立ち並び、県内で初めて重伝建に選定された中之条赤岩地区。静かな山間にあり、選定から7年たった現在は年間1万人が訪れるようになった。だが赤岩ふれあいの里委員会会長の篠原辰夫さん(73)は「店舗が少なく、案内所で特産の炭や花豆を販売するだけ。人の流れを商売に生かしきれない」と、歯がゆさをにじませる。

◎お蚕さんの里

町は養蚕集落としての素材を磨くことを優先。古い家並みの改修に力を入れ、「お蚕さんの里」の愛称で売り出している。3月には案内所近くに桑を植栽したり養蚕道具の展示室を整備。養蚕に懐かしさを感じるシニア層を取り込んで草津温泉や四万温泉、野反湖を周遊する観光モデルを見据えるが、山村ならではの魅力は十分にアピールできていない。

重伝建地区は観光の素材にならないのか。国指定名勝の楽山園を核に歴史観光に力を入れる甘楽町は、明治期の養蚕家屋が残る小幡町屋地区の重伝建選定を視野に調査に乗り出した。「重伝建を目指すことで、ここが歴史地区だというメッセージを発信できる」。町振興課振興室長の松井均さん(54)は、その効果に期待する。富岡製糸場と連携すれば、富岡甘楽のブランド力を高めることもできるだろう。

織物工場と養蚕家屋。絹産業を支えた歴史遺産を、すぐに地域振興につなげるのは難しいかもしれない。けれども、世界遺産と絡めることで、少なからず効果を生む方法はあるはずだ。

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