絹文化の今つぶさに ルポライター・高橋さん「群馬 絹産業近代化遺産の旅」 1年かけ取材「地方の底力」
- 掲載日
- 2013/06/22
本県の絹文化に焦点を当てた 「群馬 絹産業近代化遺産の旅」
本県の絹文化に焦点を当てた「群馬 絹産業近代化遺産の旅」が、繊研新聞社(東京都)から出版された。世界文化遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」をはじめとする絹遺産、養蚕農家、国内製糸業の最後のとりで「碓氷製糸」(安中市)などをルポライターの高橋慎一さん(44)=東京都=が1年かけて取材し、厳選した写真約180点とともに紹介している。
同書は「上州、開国前夜 養蚕地帯であった群馬」から「見直される庶民の技 赤城・上州座繰り」まで11章で構成。10章「養蚕農家の仕事術」は、前橋市内の養蚕農家を蚕から繭になるまで何度も取材してまとめた。
「養蚕農家は絶対に撮らなければと直感的に思った」と高橋さん。中之条町の赤岩地区の元養蚕農家も取材し、「機能美に満ちた養蚕家屋は現在も使われていた。地方文化の底力を感じた」と話す。
高橋さんに取材先を助言した繊研新聞社の吉川清悟さん(44)=前橋市出身=は「桑畑が減り、着物業界も元気がない。富岡製糸場が世界遺産に推薦された今、群馬の絹の歴史と現状を示しておきたかった」と企画意図を説明する。
明治維新後、前橋藩営製糸所を設立した藩士の深沢雄象とキリスト教(ロシア正教)の関係をはじめ、蚕糸業とともに根付いた本県のキリスト教についても4~6章で紹介している。
7章「富国強兵の旗印」では富岡製糸場を詳説。写真を使いながら「場内を散策して感じたのは、そこに生きた人間の濃厚な足跡」と記した。初めて撮影した富岡製糸場について、れんが造りの繭倉庫や繰糸場だけでなく、動かない釜など設備にも強烈な存在感を感じたという。
高橋さんは「本書を通して読者が絹遺産を巡り、絹文化を考えるきっかけになれば」と話している。
B5変型判、154ページ。1890円。問い合わせは繊研新聞社(TEL:03・3661・3681)へ。