《訪問 ぐんま絹遺産》特別編 残そう繭と絹の国~世界に伝えたい~(下)東エリア 地域彩る旧家、工場
- 掲載日
- 2013/07/23
《訪問 ぐんま絹遺産》田島弥平旧宅
県がこれまで登録した「ぐんま絹遺産」は、世界文化遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」を含め78件。上毛新聞社は世界遺産登録応援キャンペーンとして、同絹遺産をテーマに「残そう繭と絹の国~世界に伝えたい~」と題して写真、俳句、絵手紙を募集している。西エリア編に続き、東エリアの主な絹遺産を紹介する。
(55)薄根の大クワ
山桑では日本一の巨木で国天然記念物。樹高13メートル、根元周囲5.7メートル、推定樹齢は1500年。地元で「養蚕の神」として祭られる。周囲の桑園が霜害にあった時、この桑の葉を蚕に与えた。(沼田市町田町)
(58)雲越家住宅
降雪地帯に適した重厚な造りで、1887(明治20)年建築。国重要有形民俗文化財。雲越家は稲作、畑作のほか養蚕も行い、養蚕用具739点が残る。資料館として、明治から昭和の山村の養蚕実態を伝える。(みなかみ町藤原)
(43)上毛電気鉄道・大胡駅舎ほか
上毛電気鉄道は、前橋の絹糸を機業地桐生へ運び、県の基幹産業の養蚕・製糸の発展に貢献。1928(昭和3)年に伊勢崎を経由しない中央前橋~西桐生間の営業が始まり、両毛線と比べ所要時間が大幅短縮した。国登録有形文化財。
《訪問 ぐんま絹遺産》旧蚕糸試験場事務棟
(73)桐生新町重伝建地区、(67)旧曽我織物工場
桐生市本町1、2丁目と桐生天満宮(天神町1丁目)の周辺が昨年、国重要伝統的建造物群保存地区に選定された。1591(天正19)年にこの地区に桐生新町が形成されて以来、織物の中心地として発展を支えた。桐生の織物業は大正から昭和初期に最盛期を迎え、桐生新町に買継商や糸商、呉服商、染め物業の店舗が並んだ。
重伝建地区にある旧曽我織物工場(桐生市本町1丁目)は、1922(大正11)年に建てられた大谷石造りの5連のこぎり屋根工場。屋根に換気塔、壁に丸い換気窓を設ける。工場は70年頃、織物操業を停止した。
(68)後藤織物
洋式染色技術を導入し、織物の改良を行って桐生織物業に貢献する後藤織物(桐生市東)は、今も生産を続けている。木造のこぎり屋根工場や糸蔵、織物倉庫が残り、織物生産システムを表す。
(60)旧模範工場桐生撚糸(ねんし)合資会社事務所棟
1917(大正6)年建築の撚糸工場事務所棟で、県内最古級の洋風石造建造物。糸によりを掛ける作業を機械化した全国6カ所の模範工場の一つで、敷地内に工場が並んでいた。唯一現存する事務所棟は東日本大震災で被災したが、昭和初期の外観に復元改修され、今春から郷土資料を展示する絹撚記念館として公開している。(桐生市巴町)
(75)白瀧神社
京都から織物技術を伝えたという「白瀧姫」など伝説の織物の神を祭る。境内には耳を当てると機音が聞こえたという大岩「降臨石」がある。(桐生市川内町)
《訪問 ぐんま絹遺産》後藤織物
(77)旧上毛モスリン事務所
モスリンという毛織物製造会社の事務所で1908~10年の建築。左右対称の外観、張り出しの浅い屋根など明治の洋風建築の特徴を示す。戦後は神戸生絲館林工場の事務所として使われた。(館林市城町)
(78)旧大間々銀行本店および土蔵
大間々銀行は、繭と生糸の売買の際の融資を主な目的に、1883(明治16)年に本県最初の私立銀行として開業。本店建物に併設された土蔵には、担保の繭と生糸を保管した。洋風建築の本店は1921年に造られ、現在は大間々博物館として活用。(みどり市大間々町)
(48)田島弥平旧宅、(49)田島弥平の碑
世界文化遺産候補の田島弥平旧宅(伊勢崎市境島村)は、通風を重視した養蚕技法「清涼育」を大成した田島弥平が1863(文久3)年に建てた。2階建ての母屋兼蚕室は間口25メートル、奥行き9メートル。換気用の越屋根を設け、近代養蚕家屋の原点となった。近くにある石碑は、弥平の娘、民が父の功績を後世に残すため94(明治27年)に設置。清涼育の実践と普及、宮中御養蚕、海外博覧会受賞を漢文で記す。
(50)島村教会
島村教会(伊勢崎市境島村)は1897(明治30)年に建築。蚕種業者の田島善平らが蚕の卵(蚕種)の輸出で横浜に行った際、キリスト教に触れ建てた。国登録有形文化財。
(38)旧蚕糸試験場事務棟、(39)前橋の養蚕・製糸用具および関連資料
蚕糸記念館(前橋市敷島町)となっている建物は1912(明治45)年、国立原蚕種製造所前橋支所として同市昭和町に建てられた。80年まで蚕糸試験場として使用、事務棟は「糸のまち前橋」の象徴として、敷島公園ばら園内に移築保存された。
館内に市内で使われた江戸後期から昭和初期の養蚕・製糸用具や養蚕信仰、同製造所関係など国登録有形民俗文化財の資料633点を展示。
(40)旧関根家住宅、(61)赤城型民家
大室公園内に移築復元されたかやぶき屋根の旧関根家住宅(前橋市西大室町)は、赤城山南麓の典型的な養蚕農家で、赤城型民家と呼ばれる。江戸後期の建築とされ、屋根裏で蚕を飼うため、光と風を取り入れやすいように正面の屋根中央部を切り落としているのが特徴。ぐんま昆虫の森にある赤城型民家(桐生市新里町)は、明治初期の養蚕家屋を前橋から移築した。
(42)旧安田銀行担保倉庫
1913(大正2)年建築のれんが造り生糸担保倉庫。製糸業で栄えた「糸のまち前橋」の歴史を伝える。(前橋市住吉町)
【問い合わせ先】
(48)(49)(50)伊勢崎市教委文化財保護課(TEL:0270・63・3636)
(38)(39)(40)(42)前橋市教委文化財保護課(TEL:027・231・9875)
(55)沼田市教委社会教育課(TEL:0278・23・7565)
(58)みなかみ町教委(TEL:0278・25・5025)
(43)上毛電気鉄道(TEL:027・231・3597)
(60)絹撚記念館(TEL:0277・44・2399)
(61)ぐんま 昆虫の森(TEL:0277・74・6441)
(67)(75)桐生市 教委文化財 保護課(TEL:0277・46・1111)
(68)合資 会社 後 藤(TEL:0277・45・2406)
(73)桐生 市重伝建 まちづくり課(TEL:0277・46・1111)
(77)館林市教委文化振興課(TEL:0276・74・4111)
(78)大 間々 博物 館(TEL:0277・73・4123)
※外観のみ見学できる絹遺産や休館日などもあるため、事前に問い合わせを。