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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

レーダーで貯水池探査 富岡製糸場 地下遺構 利水の流れ解明へ 市教委

富岡市教委は来月にも、世界文化遺産登録を目指す旧官営富岡製糸場(同市富岡)で、初めて地下レーダー探査を導入して地下遺構を調査する。範囲は西繭倉庫周辺で、操業中に撤去された貯水池などの位置と規模を確認する。史跡の保存や整備、活用に必要な情報を得る目的だが、製糸場の構造を示す図面に記録されていない水路や施設が見つかる可能性がある。製糸場の古い生産システムの解明につながることが期待されている。

市教委によると、貯水池は製糸に使う大量の水をためるため、1897(明治30)年ごろまでに西繭倉庫の北と東の2カ所に設置された。図面に残る記録では1945年ごろまでに東側が撤去され、87年の操業停止までに北側も無くなり、現在は整地されている。戦後に上水道が整備され、鏑川からの取水と合わせて水が確保できるようになったことから、貯水の必要性が薄れたとみられる。

図面や写真から貯水池の一辺の長さは約20メートルと推測されるが、正確な規模や貯水量を示す資料は発見されていない。レーダー探査は2011年度から実施している地下遺構調査の一環。貯水池跡は整地されている上、範囲が広いため、発掘の前にレーダーを導入し、詳細に調べる必要があると判断した。

富岡が官営製糸工場の建設地に選ばれた理由の一つに、製糸に必要な水の確保が容易だったことがあるとされる。製糸場に用水を引き入れたり、井戸を掘って確保した水を貯水池や鉄水槽(国重要文化財)にためた。

記録では、生糸の増産に伴って使用する水が増えたため、1918(大正7)年に南側の鏑川から水をくみ上げる施設を設置した。2012年に崩落した南のり面からは、この施設の一部と見られる遺構が見つかった。

調査は史跡内を掘削せずに行うため、世界遺産登録の審議に向けて8月以降に実施されるユネスコ諮問機関「イコモス」の現地調査には影響しない見通し。9月までに終了し、報告書をまとめる。

富岡製糸場総合研究センターの今井幹夫所長は「製糸場の生産システムの中で水の流れは重要。用水に関わる施設の位置や貯水能力の解明につながるといい」と調査に期待を込めた。

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