富岡製糸場と絹産業遺産群 イコモス調査25、26日 担当は中国の絹専門家
- 掲載日
- 2013/09/12
来年夏の世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」について、文化庁は11日、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)による現地調査が25、26の両日に行われると発表した。調査員は中国国立シルク博物館館長の趙豊(ツァオフェン)氏。イコモスは推薦書と調査結果に基づき、来年5月ごろユネスコに評価結果を勧告。6月にカタールで開かれる世界遺産委員会で登録の可否が最終決定する。世界遺産登録に向けた県の手続きは今回の現地調査で事実上、終了する。
文化庁によると、調査員の趙氏は1961年生まれ。中国・東華大(旧中国紡績大)で博士号を取得。シルクロード周辺で見つかった古い絹織物のほか、紡織などの科学技術史、美術史、考古学まで幅広く研究している。中国イコモスの委員ではないが、「イコモスが現地調査にふさわしいと選んだ専門家」(文化庁)という。
趙氏は24日に来県。25日は富岡製糸場と田島弥平旧宅(伊勢崎市)の保全状況を調査。26日は高山社跡(藤岡市)と荒船風穴(下仁田町)の順に確認する。
調査は、政府がことし1月に提出した推薦書の内容が事実に基づき正確に記されているかを確認することが主な目的。構成資産がオリジナルの状態で存在することや、地元自治体と所有者が連携した保全体制を整備しているかなどを現場で確認するという。世界文化遺産に登録すべき価値があるか否かは、多分野の専門家が推薦書を基に判断する。
県はイコモスの現地調査に備え、ことし4月から調査員への説明リハーサルを開始。7月には文化庁職員も含めた通し練習も行い、万全の準備を進めてきた。世界遺産推進課は「絹の専門家という調査員に合った説明方法に仕上げていきたい」としている。
◎イコモス評価 重視
ユネスコの世界遺産は、世界遺産条約の締結国から選ばれた21カ国で構成する世界遺産委員会で登録の可否が最終決定される。専門家で構成するイコモスの勧告が覆ることもあるが、文化遺産だけでも759件がある中、ユネスコはイコモスの評価を重視する傾向にあり、勧告が持つ影響は大きい。
6月に登録された「富士山」は、イコモス勧告で三保松原(静岡市)を除外するよう指摘された。これは富士山から離れすぎているという現地調査の結果が影響したとみられている。富士山と同時に推薦していた「武家の古都・鎌倉」は国内単独の推薦候補としては初めて「不記載」の勧告が出された。
2度目の推薦で2011年に登録された「平泉」は、最初の挑戦となった08年に「記載延期」を勧告され、世界遺産委員会でも同様の判断が示されている。
今回のイコモス現地調査がどの程度、来春の勧告に影響を与えるかは不明だが、文化庁は「世界遺産の審査は価値と保全管理の両方を見るため、大切な調査になる」としている。