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繭糸細い新蚕品種 「ぐんま細」県が実用化 富岡ブランド中核に

2014年の「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録をにらみ、県は17日、新たな蚕品種「ぐんま細(ほそ)」を富岡市で実用化すると発表した。県オリジナル品種の実用化は2006年度以来7年ぶり8品種目。通常の繭糸に比べて3割前後細く、つやのある光沢と染色のしやすさが特徴。富岡シルクブランド協議会は市内での量産と絹製品開発を急ぎ、ぐんま細を「富岡ブランド」の中核に位置づけたい考え。

ぐんま細は、繭糸の細さが最大の特徴。従来は最も細かった中細糸の品種「世紀二一(にいち)」よりも1割ほど細い。蚕の体長は小ぶりで、餌となる桑は少量で済むため飼育しやすいという。重量ベースでの生産量は従来品種より微減するが、同協議会は通常よりも1~2割高く買い取り、養蚕農家を支援する。

県蚕糸技術センターが02年度に開発を始め、09年度から富岡市で試験飼育に取り組んできた。実用飼育は富岡市の農家3戸で今月11日から始まっており、当面は250キロの繭を生産する計画。

同協議会は試験飼育の段階から、絹布にした際のきめ細かさに着目。現在はネクタイと礼服を商品化している。今後は市内での飼育を拡大して産地化するとともに、特徴を生かした新商品開発を急ぐ。協議会事務局は、他地域との差別化を図るため「富岡製糸場の来場者に、ぐんま細の『富岡ブランド』として認知されるようにしていきたい」と意気込んでいる。

県蚕糸技術センターによると、ぐんま細の高級感のある細糸が加わることで、県産品種のラインナップはほぼ出そろう。通常の3割増しの太さのニット用「蚕太(さんた)」、飼育しやすく幅広い用途に使える「ぐんま200」、黄金色の「ぐんま黄金」など従来の7品種はそれぞれに特徴があり、幅広い需要に応じられるという。

◎需要に備え品種保存 県

蚕糸業の衰退に伴って蚕種(蚕の卵)生産農家がいなくなり、現在は県蚕糸技術センター(前橋市)が、オリジナル蚕品種の開発に必要な原種や天蚕(野生種)、突然変異種などを保存飼育している。

同センターは昨年度まで、蚕品種の開発に必要な原種105品種を飼育していた。しかし、蚕種は長期保存できず、品種を維持するには毎年1回ふ化させて飼育し続ける必要があるため、本年度から国や大学、他の研究機関が保存している蚕品種の飼育を縮小した。

今後の新品種開発については、夏の猛暑に強い品種など養蚕農家や製糸、織物業者のニーズに合わせて対応する方針。保存していない品種があれば研究機関などから入手して、開発が可能という。

8番目の県オリジナル蚕品種として認定された「ぐんま細」は現場の養蚕農家が飼いやすく、製糸がしやすいのも特徴。同センターは「今後も需要に合わせて対応していきたい」としている。

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