世界遺産へ最後の審判 富岡製糸場 弥平旧宅 イコモス現地調査
- 掲載日
- 2013/09/26
富岡製糸場の西繭倉庫前で、カメラを手に説明を聞くイコモス調査員の趙氏=25日午前10時40分ごろ
来年夏の世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」について、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」による現地調査が25日始まった。派遣された中国国立シルク博物館館長の趙豊(ツァオフェン)氏が県の担当者から説明を受けながら富岡製糸場と田島弥平旧宅(伊勢崎市)を見て回り、保全状況を確認した。26日は高山社跡(藤岡市)と荒船風穴(下仁田町)を訪問。終了後に文化庁と県が記者会見を開き、2日間の現地調査について説明する。 (関連記事 22、23面)
◎きょう高山社跡、荒船風穴
趙氏は最初、1872(明治5)年に操業を開始した富岡製糸場を訪問した。午前9時45分から製糸場の概略について説明を受け、2時間半ほどかけて場内を調査した。
古い絹織物の専門家で、科学技術史や美術史など国際的な研究もしている趙氏は、高品質な生糸を大量生産するため明治政府がフランスから製糸と工場建築の技術を導入して造った繰糸場や繭倉庫の現状を確認。政府が推薦書で訴えた「19~20世紀における養蚕、製糸技術の革新と国際交流」という価値を伝える製糸場の保存状況を調べた。
報道陣に公開された西繭倉庫前の調査では、県世界遺産推進課の松浦利隆課長が、現地調査のために用意した補足資料を使って5分ほど説明した。趙氏は木骨れんが造りの西繭倉庫の外壁や昭和初期に造られた蒸気釜所の煙突などをカメラで撮影し、担当者に真剣な表情で質問していた。関係者によると、国史跡の範囲や遺産保護のために製糸場周辺に設けられた緩衝地帯についても確認したという。
午後2時40分からは田島弥平旧宅を調査。換気用の越屋根を載せた近代養蚕家屋の構造だけでなく、周辺の大型養蚕家屋群や地元ボランティアが管理する見本桑園も見て回った。
イコモスは推薦書の内容と現地調査の報告を踏まえて、来年5月ごろユネスコに評価結果を勧告。6月にカタールで開かれるユネスコ世界遺産委員会で登録の可否が最終決定する。