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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

保全環境整備急ぐ、構成資産持つ4市町知事「いける」手応え

下仁田町の荒船風穴では、イコモスの現地調査を前に職員らが準備を進めていた=26日
下仁田町の荒船風穴では、イコモスの現地調査を前に職員らが準備を進めていた=26日

「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録へのヤマ場となるユネスコ諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」の現地調査が26日、終了した。来夏のユネスコの世界遺産委員会の審議を控え、富士山の"次"の世界遺産候補として期待が高まる。大沢正明知事や構成資産を抱える4市町の首長は期待感を示す一方、登録されれば観光客の急増も見込まれ、資産の保全や環境整備を急ぐ考えを示した。

25日にイコモスの調査員と会った大沢知事は26日、「専門家で、(遺産群を)理解してくれたと思っている。(感触は)いける」と手応えを話した。

旧官営富岡製糸場のある富岡市の岡野光利市長は「世界遺産登録はあくまでもスタート。遺産を将来にわたって守るため、市民の意識を高め、見学者の安全対策と修理保全に取り組みたい」と登録後をにらんだ展望を描く。

市は、敷地内にある100棟余りの 施設の保全とともに、今後は防災計画の策定や観光客向けのトイレ、駐車場整備を進める。史跡に 負荷がかかるのを防ぐため、来春からは混雑時の入場制限も検討している。

長野県境に近い山中にある荒船風穴(下仁田町)は、アクセスが狭い山道に限られ、観光客を安全に迎える対策が急務だ。2010年に石積みの一部が自然崩落したため史跡自体の復旧も半ば。金井康行町長は「風穴は修復作業が残っている。慎重に資産を守っていく」と気を引き締めた。

見学者が訪れていた藤岡市の高山社跡=26日
見学者が訪れていた藤岡市の高山社跡=26日

伊勢崎市は田島弥平旧宅の保存に関して今後は建物調査や文献・養蚕用具の活用方法を検討し、整備活用計画を策定する方針だ。五十嵐清隆市長は「県と協力して力を尽くしたい。来年よい結果が出ることを期待している」と話した。

高山社跡では、藤岡市が駐車場や周辺整備を急ピッチで進める。新井利明市長は「登録で市民が誇りを持って郷土を語れるようになることに意味がある。その上で『来て良かった』と思ってもらえる観光を充実させたい」と意欲をみせた。

登録が実現すれば、海外からの誘客も見込める。県観光物産国際協会は観光ガイドブックを通じて温泉地での宿泊と絡めた観光を提案するなど、世界遺産効果を全県に広げたい考えだ。

山口章専務理事は「横浜や八王子、長野との連携で"日本版シルクロード"として海外から誘客を図りたい。空港のない県にとって広域連携は不可欠だ」と展望を語った。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)