上毛新聞社「21世紀のシルクカントリー群馬」キャンペーン

上毛新聞社Presents
「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

《オピニオン1000 主張》イコモス現地調査 展示解説に大きな役割 富岡製糸場世界遺産伝道師協会会長 近藤 功さん(72)

ユネスコ諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)による「富岡製糸場と絹産業遺産群」の現地調査が終わった。調査員は遺産群4資産の関連性や来訪者に養蚕、製糸の生産システムを理解してもらう展示解説に関心を示したという。現地調査を受け、民間ボランティアの富岡製糸場世界遺産伝道師協会会長、近藤功さん(72)は絹の歴史と文化をより分かりやすく伝えていく必要性を訴える。

◇  ◇  ◇ 

現地調査では、遺産の保存管理の現状と今後の見通しを確認した。遺産の保存に関わる民間活動は推薦書にも記され、評価の対象となる。その意味で、県内のボランティア団体が群馬の絹産業の歴史、絹遺産について県内外で伝え、理解してもらえるよう運動を継続していくことが大切。世界遺産に登録されたら終わりではない。

伝道師協会は学校キャラバンで、世界遺産や養蚕について教えている。登録後も「世界遺産学校」といった授業で、伝道師が手伝いながら群馬の絹産業の歴史を学ぶようになればいい。民間と学校が連携して、郷土への誇りを育んでいくことが大切ではないか。

ハード面では、絹産業遺産群を見学に来た人たちに、資産の全体像を分かりやすく紹介する施設が必要だ。その一角に解説員の活動拠点を設ければ、来訪者の理解促進につながる。  絹産業遺産群は、19~20世紀に高品質な生糸の大量生産を実現した養蚕、製糸技術の革新と国際技術交流を物語る遺産の集合体だ。生糸の生産量を世界一にするには、大量の繭の確保が欠かせない。養蚕農家が工夫して生産した繭があって、製糸場が稼働した。だからこそ、まず県民に真の主役は農家だったことを知ってほしい。そのためにも民間ボランティアや養蚕に携わった人たちが遺産群の価値を理解し、若い人に伝えていくことが必要だ。

田島弥平旧宅や高山社跡を以前視察したイタリアの専門家は、外国にはない通風を重視した建物構造に感動し、イタリアでは家財道具を屋外に出して養蚕をしていたと話していた。弥平旧宅のような大きな養蚕家屋は全国各地に造られたが、原型となった両遺産は世界的な価値がある。こうしたこともあまり知られていない。世界遺産登録に向け、ボランティアや養蚕・製糸を知る県民が地道に活動を続け、全国、世界に絹の歴史を伝えていかなければならない。

(取材・構成 紋谷貴史)

こんどう・いさお 北海道大卒。元高校教諭。県の文化財保護行政にも携わった。2004年から富岡製糸場世界遺産伝道師協会会長。第17期委員。前橋市南町

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)