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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

明治政府の力象徴 「立派すぎ」奇跡的に保存 東大大学院鈴木教授 富岡製糸場価値を再認識

富岡製糸場の歴史的価値について講演する鈴木さん
富岡製糸場の歴史的価値について講演する鈴木さん

富岡市の富岡製糸場開業記念日(10月4日)にちなんだ世界遺産講演会(同市主催)が5日、同製糸場で開かれた。歴史学・機械技術史を専門とする東京大大学院教授の鈴木淳さん(51)が、「近代化遺産富岡製糸場の歴史的価値」と題して講演した。

製糸場の設計図を作製したフランス人のバスチャンが建設に関わった横須賀造船所や、製糸場操業後の1877(明治10)年に創業した新町紡績所(高崎市)と、製糸場をそれぞれ対比。その価値を解説した。

鈴木さんは、製糸場が赤れんがの巨大工場であり、鉄の煙突を所有するなど、明治政府の力と産業革命期を象徴する姿が求められたと説明し、「『立派すぎる製糸工場』になったことで奇跡的に残った」と指摘。船や機械の大規模化を受けて木骨れんが建物が跡形もない横須賀、低コスト経営で木造建築となった新町との違いを紹介した。

 また、赤れんがに比べて見栄えが良くない製糸場敷地内の寄宿舎など木造建築も「その時代」を象徴する重要な遺産であると強調。「経済活動の中で富岡製糸場が残った理由がある。富岡の姿を通して失われた建物や、それとともに生きた人々の歴史もしのびたい」と締めくくった。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)