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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

世界遺産へ文化継承 富岡市内8小学校 蚕飼育、座繰り体験 「蚕と生糸のふれあい体験事業」開始

蚕の生態や養蚕を学んだ富岡高瀬小での授業
蚕の生態や養蚕を学んだ富岡高瀬小での授業

富岡製糸場の世界文化遺産登録を推進するため、富岡市は本年度から、市内の8小学校で「蚕と生糸のふれあい体験事業」を始めた。市内の養蚕農家らが協力し、児童は蚕の飼育と座繰り製糸を体験する。製糸場を支えた蚕糸業への理解を深めてもらうとともに、養蚕農家の後継者育成につなげたい考えだ。

富岡が官営製糸場の建設地に選ばれた要因の一つは、養蚕が盛んで原料となる繭が大量に確保できる点だった。製糸場の世界遺産登録を目指す上で、市は建物の保全だけでなく、養蚕文化の存続も重視している。

事業を推進する市農政課によると、市内の養蚕農家は14軒でいずれも60代以上。産業としての存続は危機的状況だ。市内でも「実物の蚕を見たことがない」という子どもは少なくないため、市は学校教育で養蚕に触れてもらうことを決めた。

富岡高瀬小で9月12日に行われた養蚕授業では、養蚕農家らでつくる甘楽富岡蚕桑研究会や日本絹の里(高崎市金古町)から講師を招き、4年生111人が蚕の生態や飼育のこつを学んだ。

講師が蚕は絹を得るためにつくられ、人間の手を借りないと生きていけない虫であることを説明すると、児童からは「少しかわいそう」「1匹だけガにしてもいい?」という声が上がった。市農政課は「家畜と同じで生命の教育にもつながる」とみる。

各クラスで育てた蚕は9月下旬に繭となった。できた繭は、製糸場などで座繰り製糸の実演をしている講師の指導で生糸にする。同研究会の高橋純一会長は「絹は工業製品と違い、蚕を育てることでしか作れない。体験を通じて養蚕をやってみたいという子が育つといい」と期待する。

ふれあい事業とは別に、市教委は来年度、富岡製糸場を核として地域を学ぶ「ふるさと学習」を全小中学校17校で導入する方針。各校区の文化財や自然、偉人について理解を深める目的で、各校独自の内容になる。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)