島村渡船 運休1カ月 台風で船着き場埋まる/航路確保できず 復旧工事のめど立たず
- 掲載日
- 2013/10/18
土砂で埋まった左岸の船着き場。渡船は岸に引き揚げられていた
伊勢崎市境島村で、利根川両岸を結び「島村の渡し」として知られる渡船が1カ月にわたり運休していることが17日分かった。9月16日の台風18号の影響で川底に土砂がたまり航路が確保できなくなったのに加え、船着き場も土砂で埋まったためだ。島村には、世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産「田島弥平旧宅」がある。市は11月からこのエリアに無料シャトルバスを運行し、弥平旧宅の見学や渡船を楽しんでもらい観光客を呼び込む算段だったが、復旧のめどは立っていない。
市道路維持課などによると、渡船の運航は1メートル以上の水深が必要だが、台風18号による大雨で川底に土砂が堆積して右岸側で水深50センチほどの箇所ができ、航路を確保できなくなった。両岸の船着き場も土砂で埋まった。
市は、9月17日に渡船の運休を決め、掘削工事に向け川底の状況の確認を進めていたものの、16日の台風26号の影響で川底の状態が判断できなくなった。再度掘削工事の計画を立てるには時間がかかるという。
遺産群の世界遺産登録をにらみ市は11月から土日祝日に、東武伊勢崎線境町駅から利根川左岸の「利根川水辺プラザ公園」を経由し、右岸で弥平旧宅最寄りの「島村蚕のふるさと公園」を結ぶ無料シャトルバスを運行する。弥平旧宅への行き帰りに利用できる渡船は重要な観光資源と位置づけられていた。
弥平旧宅のガイドを務める「ぐんま島村蚕種の会」事務局の栗原知彦さんは「渡船は島村を感じてもらう財産の一つ」と説明する。弥平旧宅散策や演奏会で島村を盛り上げている「みちくさ塾」の金井拓美代表も「県外から来た人には乗船希望者が多い。案内できないのは残念。早く復旧してほしい」と話した。
市道路維持課は「シャトルバスの運行で観光客も増えるので、川底の土砂の掘削工事と船着き場の改修を急ぎたい。しかし、新たな台風の接近や安全性を考えて、工事日程を決める必要がある」とした。
島村渡船が運航する「島村の渡し」区間は、昨年度県から市に移管され、市道となった。毎年5月には渡船フェスタが開かれ、乗船希望者で行列ができる。年間利用者は、2011年度2936人、12年度は4958人で本年度は8月末までに4222人だった。