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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

《季楽学 ぐんま》蚕の企画展 道具語る繭の歴史

さまざまな養蚕道具が並ぶ「蚕の懐古展」。天井からは回転まぶしがつり下げられている=高崎市歴史民俗資料館
さまざまな養蚕道具が並ぶ「蚕の懐古展」。天井からは回転まぶしがつり下げられている=高崎市歴史民俗資料館

本県の養蚕業の歴史を振り返る企画展が、高崎市とみどり市でともに12月8日まで開かれている。来年6月の世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」が注目される中、高品質の繭作りのために考案された養蚕道具を通して、祖父母らが汗した歴史をより深く学んでみよう。

ボランティアに教わり、機織り体験する小学生=高崎市歴史民俗資料館
ボランティアに教わり、機織り体験する小学生=高崎市歴史民俗資料館

高崎市歴史民俗資料館の「蚕の懐古展」では、繭を作る場所になる回転まぶしが天井からつり下げられている。まぶし1枚に繭が入る区画は156ある。

明治後期から昭和初期に富岡製糸場を経営した原合名会社が、有力養蚕農家に配った手回し式扇風機もある。大正期のもので、湿気が蚕の病気を引き起こすため、扇風機でぬれた桑の葉を乾燥させたという。

温度調節して蚕の卵(蚕種)を一斉にふ化させる催青器、桑葉を刻む桑切り機、蚕室用の火鉢、炭の粉を再利用する練炭製造器のほか、繭の豊作を願う繭玉、だるま、てんぐ面など養蚕文化に関する83種類約440点を展示している。

高崎市内の養蚕農家は37戸に減少した。昔の暮らしを学ぶため、見学に来た高崎金古小の3年生は初めて見た蚕種や道具に興味を示し、ボランティアに教わって機織りも体験した。

蚕の卵が産み付けられた蚕種紙などが並ぶ=大間々博物館
蚕の卵が産み付けられた蚕種紙などが並ぶ=大間々博物館

学芸員の大工原美智子さんは「小さな蚕を育てるため多くの道具が作られ、農家は繭一個も無駄にしなかったことを知ってほしい」と強調した。

一方、みどり市大間々博物館は、記念展「カイコが育てた大間々銀行」を開いている。旧大間々銀行が大正期に建てた銀行本店と、融資の担保にした繭や生糸を保管した土蔵は同博物館として活用されており、県の「ぐんま絹遺産」にも登録された。

回転まぶしや桑摘み用の爪、農家が福島、長野、京都から取り寄せた蚕種紙、担保の繭と生糸の数量を記した同銀行の明治39年の貸付物品控帳など約100点が並ぶ。

同銀行が使ったとみられるフランス・リヨン製の生糸の太さを測る「検尺器」も展示。副館長の清水勝さんは「大切な収入源だった蚕を農家はおこさまと呼んだ。そんな養蚕業と大間々銀行が果たした役割を考える機会にしたい」と話した。

洗練されたデザインが特徴のフランス製検尺器=大間々博物館
洗練されたデザインが特徴のフランス製検尺器=大間々博物館

【高崎市歴史民俗資料館】▽高崎市上滝町1058▽電話 027・352・1261▽午前9時~午後4時、月曜と祝日の翌日休館▽入館無料▽常設展では昭和前期の教室を再現したり、明治から昭和の生活用品を紹介。毎週水・金曜に機織り実演。

【みどり市大間々博物館(コノドント館)】▽みどり市大間々町大間々1030▽?0277・73・4123▽午前9時~午後5時、月曜休館▽入館料一般200円、小中学生50円▽土蔵2階で養蚕や製糸の道具を常設展示。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)