東谷風穴を整備 荒船(絹産業遺産群)に次ぐ蚕種貯蔵能力 14年度にも管理計画 中之条
- 掲載日
- 2013/11/29
天然の冷蔵庫として養蚕業の発展に寄与した東谷風穴
中之条町教委は28日までに、国指定史跡の蚕種貯蔵施設「東谷(あずまや)風穴」(同町赤坂)の保存整備に乗り出す方針を決めた。来年6月の世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産である「荒船風穴」(下仁田町南野牧)と同時に国史跡に指定されたが、世界遺産候補から外れたため荒廃したままになっていた。2014年度内をめどに保存管理計画を策定し、風穴が使われていた当時の景観に近づけるよう整備する。
東谷風穴は東谷山北面の中腹にあり、明治時代後期から昭和初期まで使用された。地名から栃窪風穴とも呼ばれる。蚕種の貯蔵能力は10万枚とされ、県内では荒船風穴に次ぐ規模を誇った。10年2月に「荒船・東谷風穴蚕種貯蔵所跡」として国史跡に一括指定された。
東谷風穴は2007年に富岡製糸場が国内候補地の「暫定リスト」に記載された際の構成10資産に入っていたが、県が世界遺産登録の傾向を踏まえて構成資産を絞り込む中で候補から外れた。
その後、風穴は荒れたままになっていたが、町教委は貴重な絹産業遺産である東谷風穴の価値や歴史を伝えるため、計画的な保存管理に乗り出すことを決定。今月18日には荒船風穴の保存管理計画策定に関わったメンバーを中心に計13人で構成する策定委員会を発足。委員長に秋池武・下仁田ふるさとセンター所長、副委員長に宮崎俊弥・元共愛学園前橋国際大学長補佐を選任した。
本格的な策定作業は来年度からだが、風穴近くにある樹木の根が石垣を破損する恐れがあることから、緊急を要する処置は関係機関と協議して、年度内にも実施する。
東谷風穴へと続く道は自動車がかろうじて走行できる道幅しかなく、落石の恐れもあるため、現在は一般の見学が困難となっている。風穴を構成した石垣も部分的に崩落しており、公開に向けた周辺整備や修復も課題となりそうだ。町教委は風穴が使われていた当時を知る人への聞き取り調査も行い、修復の参考にする。
折田謙一郎町長は「世界遺産候補からは外れたが、荒船風穴と同等の評価を受けている。先人の知恵を今に伝え、近代化を担った地域の誇りを大切に保存していきたい」としている。
◎絹遺産に78件登録して活用
県は、世界文化遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成4資産と合わせて県内に残る有形、無形の絹遺産を保存活用するため、2011年から「ぐんま絹遺産」として登録している。これまでに東谷風穴を含む78件が登録された。
世界遺産推進課は「東谷風穴は地域の蚕種を貯蔵した史跡として高い価値がある。しっかりした管理計画を作り活用してほしい」と中之条町教委の計画に期待する。
東谷風穴の整備で文化庁から助言を受けた県教委文化財保護課も「保存管理計画の作成は史跡の維持にとって大きな前進」と評価。荒船風穴を先行事例に国史跡としての価値をより明確にしていく必要性を指摘している。