「清涼育」の家 じっくり 伊勢崎・田島弥平旧宅 上棟150年記念で解説会 工夫の造りに驚き
- 掲載日
- 2013/12/02
解説を聞きながら田島弥平旧宅を見学する来場者
世界文化遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産の一つで国史跡の「田島弥平旧宅」(伊勢崎市境島村)の上棟150周年記念事業が1日、旧宅と周辺で開かれた。専門家による現地 解説会や地元農産物を販売する「おもてなし市」など多 彩な行事が行われ、市内外から約1500人が 詰め掛けた。普段のどかな農村地域が にわかに活気づき、地元からは「旧宅をぜひ世界遺産に」との期待の声があらためて上がった。
弥平は、蚕室の風通しを良くして優良な繭を生産する技法「清涼育」を確立した。文久3(1863)年に建築された旧宅母屋は幅約25メートル、奥行き約9メートルの大きな住宅で1階が住居、2階が蚕室になっている。屋根に換気口となる櫓(やぐら)がある造りで、近代養蚕農家建物の原型として全国に広まった。
5回行われた旧宅の解説会には毎回30人以上が参加。市教委文化財保護課職員が旧宅の特徴を解説すると、来場者はメモを取りながら熱心に聞き入った。
養蚕農家群の散策会も行われ、案内役を務めた日本工業大の 黒津高行教授(58)が、建物の基礎部分が利根川の洪水から家を守るために高く なっていることを説明。「自然に負けないたくましさを感じる」と伝えた。
近くの宝性寺で行われた「おもてなし市」では地元産のハクサイやゴボウ、ネギなどを販売。伊勢崎興陽高の生徒たちがゴボウで作ったケーキを用意した。1年前に発足した地元の新地八木節愛好会は踊りと演奏で盛り上げた。
初めて旧宅を訪れた同市太田町の竹沢仁さん(68)は「伊勢崎の宝」と感激した様子。同高1年の新井保乃夏(ほのか)さん(16)は「家にさまざまな工夫があることがすごい」と話した。
記念事業は住民でつくる境島村まちづくり推進会議と市、市教委が主催。同会議の野中宏一会長(68)は「こんなに多くの人が来てくれたのは初めてではないか。世界遺産になるのが待ち遠しい」と話し、目を輝かせた。