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富岡製糸場西繭倉庫を大改修 来年度から耐震補強 5年後めど公開

大規模な保存修理が行われる富岡製糸場の西繭倉庫
大規模な保存修理が行われる富岡製糸場の西繭倉庫

旧官営富岡製糸場を所有する富岡市は来年度、国重要文化財「西繭倉庫」の保存修理に着手する。1872(明治5)年の操業当初から残る屋根瓦やれんがの壁を解体し、建物を耐震補強する大規模工事となる見通し。解体設計費を来年度予算に計上し、世界文化遺産への登録決定後に具体的な 整備計画を策定する。5年後をめどに全面公開する方針。

文化財指定された官営期の主要建造物を本格的に修理するのは初めて。西繭倉庫は富岡製糸場を代表する建造物で1872年に完成した。木造の骨組みの間にれんがを積み上げる「木骨れんが造り」で、建物は長さ104・4メートル、幅12・3メートル、高さ14・8メートル。2階を乾燥させた繭の貯蔵庫として使い、操業当初は1階北半分が蒸気エンジンを動かすための石炭置き場だった。

部分的に改造されているものの建物は老朽化と安全性が懸念され、内部は非公開。2012年度に市が策定した製糸場の整備活用計画では最初に保存修理する建物に指定されている。計画では本年度に改修がスタートすることになっていたが、国際記念物遺跡会議(イコモス)による現地調査があったため、計画を先送りしていた。来年6月に世界文化遺産登録が決まり次第、整備に着手する。

市によると、明治初期の木骨れんが造りの建物が完全な形で残っているのは富岡製糸場のみ。耐震補強の技術は確立されておらず、手法については有識者でつくる保存修理委員会や文化庁と協議していく。

耐震補強後は研究、学習発表スペースや交流サロンのほか、本来の機能を踏まえて収蔵庫として活用する計画。現在、東繭倉庫にあるガイダンス展示を西繭倉庫に移設し、その後に東繭倉庫の保存修理に取り掛かる。世界遺産登録に伴って来場者の増加が予想されるため、市は解体整備中の現地説明会なども検討している。

富岡製糸場総合研究センターの今井幹夫所長は「国内では現存最古の木骨れんが造りの建物であり、耐震補強工事の類例がない。文化財として保存活用するために専門家と十分検討する必要がある」としている。

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