種から絹へ・上州絹星を追う

1 「掃き立て」66万匹の目覚め

上州絹星の毛蚕の上に人工飼料を乗せ、食べやすいように並べる
上州絹星の毛蚕の上に人工飼料を乗せ、食べやすいように並べる
蚕種の殻(白くて小さい粒)からはい出した黒い毛蚕。体長3ミリ前後。大きい球形は紙包みがつぶれないための支え
蚕種の殻(白くて小さい粒)からはい出した黒い毛蚕。
体長3ミリ前後。
大きい球形は紙包みがつぶれないための支え

A4判ほどの紙包み一つ一つに、一万五千匹の命が詰まっている。包みを開くと、両面にびっしりと張り付いていた毛蚕(けご)が、ゆっくり動きだした。紙からこぼれ落ちた数匹を、女性の作業員が羽根のほうきで優しく救い上げる。「目は覚めましたか。丈夫に育つんだよ」。そう語りかけるような優しいまなざしだ。

高崎市金古町のはぐくみ農協稚蚕人工飼育所で八日、今年最初の飼育が始まり、蚕種からかえった毛蚕にえさを与える「掃き立て」作業が行われた。今年の注目は、新しい群馬オリジナル蚕品種「上州絹星(けんぼし)」。同飼育所は紙包み四十四枚、計六十六万匹を十日間、三齢になるまで育てる。

紙の上に人工飼料を乗せ、蚕が食べやすいように並べる。作業員十四人の手際良い流れ作業。やがて腹をすかせた毛蚕たちが、飼料へと群がり出した。同飼育所の清水良雄さん(52)は引き締まった表情でひと言。「新しい挑戦は大切。丈夫に育てて養蚕農家に届ける」。

文・斉藤洋一
写真・山田浩之

(2007/5/9掲載)