種から絹へ・上州絹星を追う

2 「配蚕」農家へ巣立ち

友松さん宅の飼育台で元気にクワを食べる上州絹星の蚕。掃き立てから2回脱皮し、3齢となった体長は2センチほど
飼育台の蚕にクワを与える実衛さん(左)とミキさん。春蚕(はるご)の始まりに胸は高鳴る
飼育台の蚕にクワを与える実衛さん(左)とミキさん。春蚕(はるご)の始まりに胸は高鳴る
友松さん宅の飼育台で元気にクワを食べる上州絹星の蚕。掃き立てから2回脱皮し、3齢となった体長は2センチほど

掃き立てから十日。わずか三ミリほどだった「上州絹星(けんぼし)」の蚕は、二センチほどに成長した。互いに重なりあい、顔を付き合わせる姿は、じゃれ合っているようにも見えた。

高崎市金古町のはぐくみ農協稚蚕人工飼育所は十八日、三齢まで育てた蚕を養蚕農家に配る「配蚕(はいさん)」作業を行った。上州絹星の六十六万匹も、同市内の七軒へ巣立った。

飼育所作業員の友松実衛さん(66)、ミキさん(65)夫妻=同市井出町=はこの日、最後の蚕の箱詰め作業が終わると、上州絹星十五万匹余りを自家用の軽トラックに乗せて、自宅に連れて帰った。これからは養蚕農家として育てる。

飼育台に蚕を移し替え、網をかぶせ、刻んだクワの葉を与えると、蚕は網の上へはい上がってクワをむさぼり始めた。「家での飼育は半年ぶり。懐かしい。新品種は小粒だけど、元気そうだね」と実衛さん。勢いよくクワを振り掛けながら、明るい声を響かせた。

文・斉藤洋一
写真・梅沢守

(2007/5/19掲載)