種から絹へ・上州絹星を追う

4 「上蔟」“部屋”で糸吐く

回転蔟に上がった上州絹星の蚕。糸を吐き、繭を作り始める様子を百合子さん(左)が心配そうに見守る
回転蔟に上がった上州絹星の蚕。糸を吐き、繭を作り始める様子を百合子さん(左)が心配そうに見守る

蚕の体が黄色みを帯び、透き通り始めた。回転蔟(まぶし)に乗ると、四角い升目の縁に沿って、上へ下へとゆっくりはい回った。

「体が透き通るのは、もう糸を吐きたい印。自分の“部屋”を夢中で探しているのよ」。二週間の桑くれ作業を終えた高崎市金古町の伊藤百合子さん(67)は、元気に育った新品種「上州絹星」の蚕を見て、うれしそうに語った。

ほぼ一人で飼育してきたが、上蔟(じようぞく)作業を行った二日は、夫の勝二さん(67)と長男、親せきら六人でのにぎやかな作業になった。回転蔟に蚕を乗せ、蚕室の天井につるし上げた。蚕はお気に入りの“部屋”を見つけると、首を振りながら白く細い糸を吐き、体の回りに繭を作り始めた。

養蚕農家にとって上蔟は、桑取り、桑くれの重労働から解放されるうれしい日。ところが今年は新品種に挑戦しているため、百合子さんの気持ちは喜びと不安が半々だ。「きちんと繭になるかな。目方は出るかな」

文・斉藤洋一
写真・山田浩之

(2007/6/3掲載)