絹人往来

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■2・母の着物 「繭を布に伝えるんさ」

回転蔟(まぶし)と呼ばれる蚕に繭を作らせる道具。ここから繭を外し、けばまで取る仕事は繭かきと言われている
回転蔟(まぶし)と呼ばれる蚕に繭を作らせる道具。ここから繭を外し、けばまで取る仕事は繭かきと言われている

「昔はどこんちも、どこんちも機の音が絶えなかったんだいね。家で糸引いて、着物織って…」。星野正子さん(73)=赤城村栄=は急須(きゅうす)にお湯を足しながら、桐ダンスから取り出した着物を畳に広げた。青地に松竹梅の模様をあしらった訪問着だという。お母さんが糸を引き、自分で織った。もう五十年近く前のことだ。

「ばあさんになっても着られるように地味な柄のもあるよ。今は着ねえからのう。タンスの肥やしだよ」。冗談めかして笑うと、今度は振りそでのパンフレットとチラシを見せた。

(2000年11月29日掲載)