■9・「雨が降ってるみたい」
毎年3月に行う彼岸切りと呼ばれる桑の手入れ。作業の合間にビニールシートを敷いてお茶を飲むのも楽しみのひとつ
「ぼくたちの繭を糸にしてください」。皇后さまの繭をひいた松井田町新堀、碓氷製糸農業協同組合の茂木雅雄組合長(70)のもとに一本の電話が入った。強い日差しが梅雨明けを思わせる七月初旬のことだった。
電話の主は神奈川県川崎市の栗木台小(渡邊慶子校長)の五年二組の児童。総合的学習の一環で二カ月間、養蚕を体験した。卵をふ化させ、教室の真ん中で飼育した。学校周辺に残る桑畑から桑をもらい、朝、昼、放課後と桑を与えた。「雨が降っているみたい」。大きな音をたてて桑を食べる蚕に驚き、繭を作り姿を消していくのを見てみんなで涙を流した。そして、「どうしたら蚕が一番喜ぶか」をクラスで長い時間をかけて話し合った。
(2000年12月9日掲載)