■6・若い力 美しい絹の再生誓う
伝統の技を残そうと桐生ではさまざまな活動が展開されている。桐生織塾には世界の機織りの道具類が詰まっている=桐生市梅田町
「続けていってもいいんだろうか」。下山智弘さん(45)=桐生市境野町=は病院のベッドの上で自問していた。下山さんは機屋の二代目。絹を使った新しい商品開発に取り組む若手機屋グループ「布の鼓動」の代表を務める。昨年秋に痛めたアキレスけんを再度痛めての入院、病院生活は一カ月を越えた。長い入院は、結論を引き出す時間でもあった。「厳しい状況は変わらないけど、いままでやってきたことが間違いじゃない。それを確信できた」。気持ちの整理をつけるように、視線を窓の外に向けた。視線の先には生まれ育った桐生の街並みが広がっていた。
下山さんがこの世界に入ったのは二十五歳の時。大学を卒業して東京のアパレルメーカーに丸二年勤めた後、父に呼び戻された。婦人服地を生産していた会社は、はた目には順風と映っていたが、業績悪化の兆しが忍び寄っていた。「同じことをやっているのに…」。もがいても、もがいてもいっこうに光明が見えてこない。「なぜ」と眠れない日もあった。
(2001年3月8日掲載)