絹人往来

絹人往来

■3・親子二代 「だれにも頼ってないよ」

おばあさんが上州座繰りで糸を引く。江戸時代に上州人の手によって考案されたこの木製の道具は、全国に広まった
おばあさんが上州座繰りで糸を引く。江戸時代に上州人の手によって考案されたこの木製の道具は、全国に広まった

赤城の節糸を扱う繭糸商は二人だけになった。蚕を飼うのが当たり前だった赤城山の西南ろくでも養蚕農家は数えるほどに減ったが、座繰(ざぐ)りの糸引きをやったことのあるおばあさんは今もたくさんいる。彼女たちに繭を引いてもらい、加工賃を払う。取引先は主に京都の問屋。織り上げられた着物や帯は高級品として呉服店に並ぶという。

「昔は赤城の糸を商う人間が二十人の上いたいね」。石田清夫さん(80)は仕事を継いでいる長男の明雄さん(53)の方を向いて、こう切り出した。富士見村石井の自宅の居間で二人は並んでソファーに座り、合わせれば半世紀を超える節糸とのかかわりを語り始めた。

(2005年6月12日掲載)