■12・田島 弥平
1880年3月、イタリア・トリノの画学校を訪問した際、依頼して描いてもらった田島弥平の肖像画
〈先輩が著した養蚕の書はたくさんあるが、それぞれに良いところと悪いところがあって手本には足りない。この本は私が数十年自分で試して得たもので、空論虚説はない〉
佐位郡島村(現在の伊勢崎市境島村)の養蚕研究家、田島弥平が一八七二(明治五)年に著した養蚕の技術書「養蚕新論」の巻頭を飾る「緒言八則」の一つだ。昭和の初めまで地方によっては「当たり外れは時の運」といわれた養蚕。同書の記述からは糸繭よりも難しいといわれた種繭(蚕種)への揺るぎない自信が伝わってくる。