■24・岩瀬吉兵衛
織物参考館〝 ゆかり紫〟に保存されている手動式の八丁撚糸機
猛暑の八月、桐生の老舗機屋は七五三用の正絹の祝い帯づくりに取り組んでいた。和装の袋帯、丸帯、着尺はもちろん、浴衣用の細帯、小袋帯や服地、インテリア、ネクタイなどにも、桐生で培われた伝統の織りが生かされている。
桐生織は先染め・紋織りを特徴としている。この技法は京都・西陣から一七八六(天明六)年に伝わった。その三年前、岩瀬吉兵衛が完成させた水力八丁撚糸(ねんし)機は、二百年を超す伝統的な織物づくりを下支えする画期的な技術だった。
糸を染めるには、繭からひいた複数の生糸に撚(よ)りをかけ、強く、太くすることが欠かせない。岩瀬の発案は撚り糸を大量に作る道を切り開いた。