■32・沼賀茂一郎
沼賀茂一郎(写真提供・沼賀哲郎さん)
〈氏が常に大志を抱いて思うに、男子この世に生まれて、世のためにならずして死んで瓦や石と同じにはなりたくない〉(八幡村長・林真一郎『実業精勤者 沼賀氏伝記』から意訳)
沼賀茂一郎を記した数少ない文章から、人生への強い意志が見える。幕末から明治にかけ、沼賀の足跡は水車を使った製糸業、貿易商、生糸商、舟運業、県議、桑園改良-と変転を重ねた。予期せぬ出来事に見舞われては、進取の気性と不屈の精神で新しい事業を起こした。開国とともに揺れ動いた絹の歴史と二重写しの生涯だった。